【制度比較】兵庫県と広島県の中小企業技術・経営力評価制度

目次

新しいフェーズに入った広島県の技術評価制度

2005年に誕生した兵庫県の中小企業技術・経営力評価制度は2013年に広島県に波及しました。その後は兵庫県と同様の制度として運営されてきた「広島県中小企業技術・経営力評価制度」は、2024年度より「中小企業成長プラン策定支援事業」へリニューアルされました。

発行元である公益財団法人ひろしま産業振興機構のホームページによると、以下の変更点が掲載されています。

※※※主な変更点※※※
従来、発行してきた「技術・経営力評価報告書」に加えて、貴社の成長目標に向けて、優先度の高い課題の解決や強みをより伸ばすための具体的な取組方法を記載した「成長プラン」を発行、提案します!
あわせて、取り組んだ場合の売上高などの収支シミュレーションも作成します!

自社の強み・弱み等をまとめた「技術・経営力評価報告書」を発行し現状認識を深め、企業の成長目標達成に向けた優先度が高い課題等への具体策を「成長プラン」として提案し、成長を支援するという制度変更がなされました。

兵庫県と広島県の「技術・経営力評価報告書」の相違点①

広島県と兵庫県の「技術・経営力評価報告書」の書式を並べてみました。

左が兵庫県、右が広島県の本文の書式です。それぞれ発行機関が公表しているサンプルから抜粋しました。(以降の画像も同様です)

正直、大きな違いはありません。兵庫県はカクカクしていますが、広島県は丸みを帯びています。だから何だと言われても困りますが・・・。

とても余談ですが、両方の評価書を作成した経験から言いますと、広島県の方が圧倒的に作成しやすいです。

どちらもフォーマットはWord形式です。兵庫版は罫線がたくさん引いてあって見た目的には好みです。

ただ文章を作成していると罫線がズレたり、線の太さが所定の形式と変わったり、特にページをまたぐと大変なのです。

広島県版はシンプルなので、その辺りはストレスフリーです。

兵庫県と広島県の「技術・経営力評価報告書」の相違点②

両者の二つ目の違いは、評価書の構成です。

結論から申しますと、兵庫県は各項目の評価があり、最後にまとめが来る形です。

こちらが兵庫県版です。最後の評価項目である「人材・組織体制」の後に、レーダーチャート、課題と問題点とまとめが続きます。

一方、広島県は各項目の評価の前に、「評価全体概要(サマリー版)」としてまとめが来る形です。

個人的には広島県版の様に、全体像と各項目のまとめが先に来る方が読みやすいように感じます。レーダーチャートや各項目の要約コメントから全体をつかみ、気になるところを各項目ページで詳細を確認するという使い方がしやすいと思います。

「技術・経営力評価報告書」の違いはこの位です。広島県が兵庫県版をもとに制度を作ったこともあり、大きなアレンジは加えられていないようです。

兵庫県と広島県 評価制度の流れの違い

「広島県中小企業技術・経営力評価制度」から「中小企業成長プラン策定支援事業」へリニューアルされましたが、技術・経営力評価報告書に変更はありません

リニューアルにより兵庫県にはない「成長プラン」というものが追加されました。

下図は「中小企業成長プラン策定支援事業」のパンフレットから抜粋した事業の流れです。分かりやすくするため、図表を加筆しました。赤枠の部分が成長プランの取組みとして追加された箇所です。

ここで兵庫県と広島県の流れの違いを整理しますと、ヒアリングの機会、フィードバックの機会が広島県の方が恵まれています

兵庫県では評価者である専門家が1度企業を訪問して評価書を作成します。その評価書は発行機関(公益財団法人ひょうご産業活性化センター)を通じて企業に送付されます。

広島県ではまず、発行機関(公益財団法人ひろしま産業振興機構)の職員がプレヒアリングに行きます。ここで支援機関の職員が確認した「事業の概要」、「自社目標」、「課題認識」といった情報は事前情報として評価者である専門家に送付されます。

その後ヒアリングを行い、評価書を作成する流れは同じですが、評価書完成後に「追加ヒアリング」を実施します。この追加ヒアリングでは主として評価書のフィードバックを行い、企業と認識をすり合わせ、意見交換をする場でもあります。ここで共有した課題をどう解決するかについて「成長プラン」としてまとめていきます。

最後に「フィードバック」として、企業を訪問し「成長プラン」の説明を行うという流れになります。

このように、広島県では専門家が3回企業を訪問することでヒアリングとフィードバックを行います。

広島県独自の取組み「成長プラン」の中身

広島県独自の取組み「成長プラン」の中身を見ていきます。公開されているサンプルを抜粋してご紹介します。まずは表紙と目次です。

実にシンプルです。初めて作成に携わったとき、「白い、白すぎる」というのがファーストインプレッションでした。

続いて本文です。まず左のようなまとめページがあります。

ここで企業の目標と、それを達成するにあたっての優先取組事項、アクションプランが一覧となっています。

このページについては技術・経営力評価報告書でも課題を指摘しますが、追加ヒアリングを経て、企業と共有した課題と優先順位を再確認するページだと思います。

そしてその詳細説明が図右の内容です。技術・経営力評価報告書自体もそうですが、細かく項目が分かれていないフォーマットであるため、自由度が高く専門家の力量が試される書式であると思います。

内容は、取組事項の確認とアクションプランの案を提案として作成します。

最後のページは収支シミュレーションを作成します。

アクションプランの成果を数値化することはとても良い取組みだと思います。

一方で、2回のヒアリングだけでは詰め切れない部分も多く、参考程度となるのが若干惜しいと感じます。

また、損益計算書全体になるとアクションプランでカバーされない勘定科目も多くなり、形骸化する可能性もあるのではないかと思います。

訪問回数の制限を考えますと、アクションプランに関わる部分だけを、数値目標やKPIとして設定するような形の方が良いかもしれません。

おまけ

兵庫県と広島県で公開されているサンプルを比較して気付いたどうでもいいお話。

似たような写真があるような気がします。社名は偶然にも「プレシジョンレーザー株式会社」と同じようです。

兵庫県では①新規性・独創性の評価が4ですが、広島県では3と評価が分かれている所に何があったのでしょうか?

なお、サンプルは昔の評価書をもとに作成されたのでしょうか、今の評価書と比べて兵庫県も広島県もサンプルの文章量が非常に少ないです。

項目について半ページしかない項目が多いですが、今の評価書は各項目について1ページは記載があることが通常になっています。

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この記事を書いた人

中小企業診断士として独立後12年にわたり主として事業再生の現場支援に従事してきました。支援現場では事業性評価ツールが有効に働く一方、形式的な運用で本質を見落とす場面も数多く見てきました。そうした課題を乗り越えるため、現場視点の情報共有を目的に本プロジェクトへの参加を決めました。

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