【中小企業技術・経営力評価制度の書き方】(4) 経営力 ①事業遂行能力

前回まで実現性・収益性の項目を見てきました。残り2回で(4)経営力を見ていきます。
(4)経営力では組織面について掘り下げていきます。
今回は①事業遂行能力をご紹介します。

目次

(4) 経営力 ①事業遂行能力

あらためて評価書に記載されている「①事業遂行能力」の内容について見てみましょう。

経営者の先見性、意思決定力、リーダーシップ、後継者育成などを考慮して評価を行った。

実際の評価書では以下のような項目が記載されます。

・経営理念・ビジョン

・現経営者の能力・人柄

・経営幹部や社外にいる相談相手など

・後継者とその育成状況

こうした内容を網羅しながら主として社長の経営力について評価をしていきます。

経営理念・ビジョン

評価対象企業の経営理念やビジョンを掲載し、それに対する実施状況を記載します。
実施状況というのは、ただ掲げているだけとなっている会社から、日々の業務に考え方が浸透している会社まで様々です。

浸透具合がわかる具体的なエピソードがあれば記載します。

また、経営理念を特に定めでいないという社長も少なからずいらっしゃいます。
その場合は社長が仕事をする上で大事にしている考え方を聞いています。

経営陣について

・現経営者の能力・人柄

経営者の経歴や担っている役割、能力、人柄などを記載します。経営者の人となりが見える内容になっていればよいと思います。

創業者であれば創業の動機からこれまで歩んできた内容を記載することが多いです。

また、創業者でない場合は前職がある場合は前職から、評価対象企業に入社した後どのような歩みであったかを記載します。

特にターニングポイントとなるエピソードがあれば、記載します。

・経営幹部や社外にいる相談相手など

経営者の社内外の相談相手について記載します。社内の経営幹部や社外の専門家、他社の先輩社長などが考えられます。
また、社内の相談相手であれば、経営幹部がどのような業務を担当しているか、社外の相談相手であればどのようなことを相談しているのかを記載します。

・後継者とその育成状況

よほど若い社長であれば不要ですが、後継者の存在やその育成状況は事業遂行能力を評価する上で重要です。

事業遂行能力の評価について

この項目ですが、ヒアリングを通じて良く書きすぎるケースが多く見られます。

ヒアリングをする中で、社長のファンになってしまい必要以上によく見えてしまうケースがあります。

特に業界によっては人間的に素晴らしい考え方をもった社長も少なくなく、そうした社長に対して思わず「4」と付けたくなります

しかし、経営者は結果責任があります。どれだけ人間的に良い人でも業績が良くなければ3以下しか付けることができないと思います。

また、社長ほぼ一人の会社も4は付けにくいです。

社長個人のパフォーマンスが高く、業績も良いから「4」と考えがちですが、そもそも個人社長の会社で社長がハイパフォーマーでなければつぶれてしまいます

従業員を雇い、組織化して社長業をして業績が出ているのであれば「4」も良いです。

最後に、この項目はなかなか「2」を付けにくい項目です。

社長本人に「No」を突き付けるのはトラブルになりやすく、なかなか難しいです。

私の場合、犯罪行為がある場合や、社長や経営陣の考え方によって社長たちも自覚している大きなトラブルが生じている場合は「2」を付けます。

サンプルの内容の解説

ここからはサンプルを見ながら内容を解説していきます。
サンプルは前回と同じ企業になります。

(1)経営理念

当社の経営理念を記載しています。その実践として具体的なエピソードをお聞きしましたので、記載しました。

(2)事業遂行能力

社長が入社後、アイデアマンとして開発をけん引してきたエピソードを記載しています。

また、経営幹部であり後継者でもある専務についてもどのような仕事をしているのか、社長と専務の役割分担を記載しています。

(3)事業遂行能力の評価

この項目は実は初稿段階ではありませんでした。というのも、最初の評価ではこの項目はここ数年の業績を加味して「3」としていました。

しかし、初稿を基にした評価機関との打ち合わせにて、引き継いだ会社を着実に発展させ、事業承継についても準備を進めている点や改善意欲から、「4」と評価しても良いのではないかという提案を頂きました。

そのため「4」とするとともに、高評価した理由として追加しています。

次回は「(4) 経営力 ②人材・組織体制」を紹介します。

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この記事を書いた人

中小企業診断士として独立後12年にわたり主として事業再生の現場支援に従事してきました。支援現場では事業性評価ツールが有効に働く一方、形式的な運用で本質を見落とす場面も数多く見てきました。そうした課題を乗り越えるため、現場視点の情報共有を目的に本プロジェクトへの参加を決めました。

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