【中小企業技術・経営力評価制度の書き方】(2)市場性・将来性①市場規模・成長性の内容

前回までは中小企業技術・経営力評価制度の書き方として、(1) 製(商)品・サ-ビスを見てきました。大きくは製品・サービスを中心にビジネスモデルやその優位性、そして中小零細企業で課題となりがちな維持継続という観点を評価しました。

今回から(2)市場性・将来性として、外部環境に関する項目を見ていきます。

目次

(2)市場性・将来性 ①市場規模・成長性の内容

あらためて評価書に記載されている「①市場規模・成長性」の内容について見てみましょう。

対象製品・サービスの市場規模(潜在規模も)、市場安定性(需要変動)・成長性(今後の需要動向)について評価を行った。法令の制定・改正による影響や、代替製品の出現可能性なども考慮の範囲とした。

実際の評価書では以下のような項目が記載されます。

・当社が事業展開している市場規模の推移

・同市場の展望

・大きなトレンドがあればその内容

こうした内容を網羅しながら市場規模・成長性について評価をしていきます。

当社が事業展開している市場

この項目では、当社が事業展開している市場規模の推移と動向を記載します。もし複数主要な事業がある場合は、その市場ごとに項目を設けます。

例えば、居酒屋とコンビニエンスストアを経営しているような会社の場合は、(1)居酒屋市場の動向、(2)コンビニエンスストア市場の動向というように作成します。

また評価対象企業が、特定の企業や業界を取引先とする場合は、その動向を記載することがあります。

例えば、売上高のほとんどを建設機器向けの部品の金属加工をしている場合は、(1)金属加工業界の動向、(2)建設機器市場の動向というように作成します。

また、主として一般消費者を対象とした製品・サービスの場合は、業界団体などのアンケート結果などを掲載することもあります。

形式的には主要事業の市場推移・動向 あとは評価の参考情報

形式的な点では、評価対象企業の主要事業の市場推移・動向が記載されます。

それ以外については、市場規模・成長性の評価を左右する重要な情報、本項目に関わらず評価書全体として見た際に、他の項目で重要となる外部環境を記載することもあります。

例えば、(1) 製(商)品・サ-ビス②優位性とその維持継続において、「維持継続の観点からは法規制への情報収集体制が重要である」と記載し、「なぜ法規制への対応が重要なのか」の詳細を市場規模・成長性の項目に記載することもあります。

サンプルの内容の解説

ここからはサンプルを見ながら内容を解説していきます。

サンプルは前回と同じ企業になります。

(1)●●●業の動向

ここは形式的な内容となっています。これまでの拡大した原因と、今後頭打ちになる可能性を示しています。

(2)新型コロナウイルス感染症拡大による影響

記憶に新しい新型コロナウイルス感染症ですが、やはりこの時期に企業を評価する上で記載は避けて通れないものでした。

しかし、ここで伝えたかった内容は「総じて持ち直しの動きがみられる。」、「マイナスの影響があ るとする割合が低下しており、回復傾向がうかがえる。」で、コロナがどうという言い訳はこの評価ではしません」という意思表示でもあります。

(3)●に関する志向

ここでは一般消費者のアンケート結果を提示しています。

これを提示した意図は、(1) 製(商)品・サ-ビス②優位性とその維持継続において指摘した、「製品開発体制の課題」への一つの提案です。過去に失敗したかもしれないが、ニーズが高まっているので研究開発体制を整えてはどうかという趣旨です。

それを言いたいために、参考情報としてデータを提示しました。

基本的には評価点数が3となる

この項目については評価点数が「3」となるケースが多いように感じます。

それこそコロナ禍のブライダル市場などは「2」になるでしょうが、基本的に市場というものは良い面と悪い面を内包しており、その中の企業も良いところもあれば悪いところもあります。

私見ですが市場が悪いのではなく市場環境に対応できない企業体制に問題があるのであり、本評価書をきっかけに経営改善や成長を目指してもらうことを考えれば、

2:市場が悪いので仕方がないよね

3:市場はまあこんなものでしょう だからどう生き残るか、どう成長するかを他の項目で示唆する

という後者の方が評価書としては適切だと考えます。

なお、「4」については市場全体が活況になるような特需等があれば4も考えますが、大抵の場合は一過性で将来性に欠くので結局「3」が妥当かと考えます。

次回は「(2)市場性・将来性 ②競合関係」を紹介します。

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この記事を書いた人

中小企業診断士として独立後12年にわたり主として事業再生の現場支援に従事してきました。支援現場では事業性評価ツールが有効に働く一方、形式的な運用で本質を見落とす場面も数多く見てきました。そうした課題を乗り越えるため、現場視点の情報共有を目的に本プロジェクトへの参加を決めました。

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