去る5月26日、私たち兵庫県中小企業診断士協会有志による調査研究プロジェクト「中小企業の生産性向上を実現する事業性評価ツールの活用モデルの調査研究」が、いよいよ公式にスタートいたしました。
前回の記事では、まだ応募前の3月の会議で、私たちが「時代の要請」を前に、この挑戦を決意した様子をお伝えしました。その熱意は、皆様の応援にも支えられ、協会の正式な事業として採択されるに至りました。この場を借りて、改めて感謝申し上げます。

そして、採択を機に、私たちのプロジェクトは一気に加速します。理念を語るフェーズから、支援現場で役立つ「カタチ」を創り出す、具体的な実行フェーズへと完全に移行したのです。議論は熱を帯び、計画は具体的なアクションへと次々に姿を変え、チームの結束は一層強固なものになっています。
今回の記事では、その加速の様子をリアルにお伝えするため、公式スタートを挟んで開催された、プロジェクトの方向性を決定づける重要な3つの会議(第2回~第4回)の模様を、ダイジェストでご報告します。
私たちの計画が、いかにして経営者の皆様のお役に立つ「価値」へと変わっていくのか。そのリアルな歩みを、ぜひご覧ください。
[第一部] 計画の解像度を上げた日々(第2回・第3回会議ダイジェスト)
理念や想いを、支援の現場で誰もが使える「カタチ」にするために。公式採択後の私たちの最初の仕事は、プロジェクトという名の設計図の解像度を、極限まで高めることでした。ここでの一つ一つの議論が、皆様と共有すべき未来への、重要な布石となります。
研究の「骨格」を決定(第2回会議 4/29)
採択後、初めての会議は、私たちの想いを具体的な「骨格」へと変える重要な一日となりました。新たに藤原正幸氏をチームに迎え、7名体制でこの挑戦に臨むことが決定。そして、無数にある事業性評価ツールの中から、まず私たちが挑むべき相手を4つに絞り込みました。「技術経営力評価書」「ローカルベンチマーク」「知的財産経営報告書」「経営デザインシート」。これらは、支援現場で特に多くの方が向き合い、そして活用の難しさに悩んでいるであろう主要ツールです。この選択は、私たちのリソースを集中させ、皆様に最も価値ある知見を届けるための、重要な戦略的判断でした。
さらに、この議論のプロセスそのものを皆様と共有するために、この「事業性評価ツールマガジン」は生まれました。ここは、閉ざされた会議室ではなく、開かれた研究室。私たちの試行錯誤をリアルタイムで共有し、皆様と共に答えを探すための場所です。
【研究&執筆担当】
事業性評価を取り巻く環境:西口
技術・経営力評価書:冨松、上田
ローカルベンチマーク:藤原
経営デザインシート:西本
知的資産経営報告書:原 /全体監修:森下
調査の「心臓部」を設計(第3回会議 5/16)
私たちの挑戦は、机上の空論であってはなりません。その信念のもと、西口リーダーは県内金融機関との対話の最前線に立ちました。そして、訪問した多くの金融機関からいただいた「協力する」という心強い言葉は、このプロジェクトが私たちだけのものではなく、地域全体で未来を創る挑戦であることの力強い証となりました。
その熱意を胸に、私たちは調査の心臓部となるアンケート設計に臨みました。メンバーから挙がった「回答者の知識レベルは?」「本部と現場の意識の差は?」といった鋭い問いの数々は、おそらく皆様が日々の支援現場で感じているであろう葛藤や疑問そのものです。私たちは、皆様の代わりにその問いをアンケートに込め、答えを探し出します。
そして、各ツールを徹底的に深掘りするための担当者も決定しました。これからこのマガジンで展開される彼らの記事は、皆様の知識をアップデートし、新たな支援の切り口を見つけるための、実践的なヒント集となるように記述していく主旨を確認しました。
[第二部] 公式スタート後、新たに見えてきた地平(第4回会議レポート 6/13)
計画の解像度を上げたことで、私たちの足場は固まりました。そして、公式スタート後初となる昨日:6月13日(金)の会議では、固めた足場の上から、私たちはさらなる遠くを見据え始めました。それは、単なる調査の「その先」にある、支援現場の「あるべき姿」です。
ついに完成!調査の要「金融機関向けアンケート」
専門家同士の真剣勝負を経て、ついに、私たちの調査の要となる「金融機関向けアンケート」が完成しました。これは単なる質問票ではありません。金融機関が事業の将来性を評価する際に、「何を」「どのように」見ているのか、その評価基準を体系的に解明するために設計された、実践的なツールです。この調査結果を分析すれば、私たち支援者が、経営者の皆様の素晴らしい取り組みを、より的確に、より説得力を持って金融機関に伝えるための「勘所」が明らかになります。経営者の努力が正しく評価され、円滑な資金調達に繋がる。そのための重要な第一歩です。
次なる一手、「インタビュー調査」の可能性を議論
私たちは、アンケートで得られる「事実」や「数値」だけで満足はしません。その背景にある、現場担当者の「生の声」や「成功事例」にこそ、経営者にとって本当に価値ある情報が眠っていると考えています。そこで私たちは、アンケート調査に加え、金融機関のご担当者へ直接お話を伺う「インタビュー調査」実施の可能性について議論を開始しました。これにより、「こんな資料があれば、もっと高く評価できるのに」といった、具体的で実践的なアドバイスを引き出し、皆様の支援活動に直接役立つ情報としてお届けすることを目指します。
最終ゴールを見据えて。100頁報告書の「目次」を構想
そして、私たちの視線はすでに、11月の最終ゴールを見据えています。この日の会議では、最終成果物である100ページの報告書の「目次」構想に着手しました。私たちが目指す報告書は、研究成果を並べた学術論文ではありません。「こんな時、どのツールが有効か」「成功事例に学ぶ、伝わる報告書の書き方」といった、支援者の皆様が明日から現場で活用でき、そして経営者の皆様が自社の価値を再発見できるような、実践的な「ガイドブック」です。そのための設計図として、この日は目次を練り上げる取り組みをスタートさせました。
まとめ:私たちの動きが、支援の現場を動かすと信じて
「もっと支援先企業の役に立ちたい」。このマガジンを訪れてくださる皆様は、きっと同じ想いを抱いている仲間だと、私たちは信じています。しかし、日々の業務の中で、事業性評価という大きなテーマに一人で向き合うことの難しさも、また事実です。
私たちのこのプロジェクトは、単なる一団体の調査研究ではありません。兵庫県で中小企業支援に真剣に向き合う、すべての皆様の「課題意識」と「知恵」を結集し、誰もが使える「実践的な羅針盤」を創り上げる挑戦です。だからこそ私たちは、緻密な計画を立て、アンケートの設問一つ一つに魂を込め、最終報告書の姿まで見据えて議論を重ねています。この「本気度」こそが、私たちの原動力です。
これから始まるアンケート調査は、県全体の支援の現状を映し出す鏡となります。そして、このマガジンで公開していく各ツールの解説記事は、皆様が明日からの支援現場で使える「武器」の一つになるはずです。
私たちの本気が、やがて皆様の力となり、兵庫の中小企業を元気にする大きなうねりとなる。そう信じて、私たちは走り続けます。どうぞ、この挑戦の最前線に、引き続きご注目ください。