皆様、こんにちは!事業性評価ツールマガジンの管理人、中小企業診断士の西本です。
前回、私たちのプロジェクトが議論から実行へと移行し、金融機関向けのアンケートが完成したことをご報告しました。そしてこの度、そのアンケート調査に、なんと143件ものご回答が集まりました。これは当初の目標100件を大きく上回る数です。ご協力いただいた皆様、心より感謝申し上げます。
今回は、その熱意の結晶である膨大なデータから見えてきた、金融機関の「リアルな声」をいち早くご報告します。採れたてのデータと、現場の生の声が交錯した第5回会議の模様を、ぜひご覧ください。
アンケート結果速報 — 143件のデータが語る「金融機関のリアル」
私たちの仮説が、机上の空論としないために、多くの金融機関の関係者にご協力をいただきました。このデータは、兵庫県内の金融機関における事業性評価ツールの活用実態を鮮明に映し出すものです。
わかったこと①:認知度・活用度は二極化。ローカルベンチマークと技術評価が「2強」
今回の調査で、事業性評価ツールの認知度と活用度にはっきりとした差があることが分かりました。特にローカルベンチマークと技術経営力評価報告書が「2強」として現場で活用されている実態が浮き彫りになりました。
- ローカルベンチマーク:約90%の回答者が認知しており、そのうち約3分の2が活用経験を持つ。経営課題の発見や、業界平均との比較、経営者との対話のきっかけとして主に使われています。しかし、地域特性の考慮が難しい、定性評価の基準が曖昧といった課題も指摘されました。
- 技術経営力評価報告書:約67%が認知し、約半数が活用経験を持つ。目的は企業の技術力や市場性の客観的な評価ですが、専門知識が必要な点が課題とされています。
一方で、経営デザインシートや知的資産経営報告書は認知度が低く、普及にはまだ時間がかかりそうです。この結果は、私たちが今後どのようなツールに焦点を当てて情報発信すべきかの重要なヒントとなります。
わかったこと②:約4割が「独自ツール」を開発・活用している
アンケート回答者の約4割が、外部ツールだけでなく、独自に開発した事業性評価ツールを保有・活用していると回答しました。これは、各金融機関が画一的なツールに頼るだけでなく、それぞれの顧客や地域に合わせた最適な支援方法を模索していることの証です。しかし、会議ではこうした独自ツールが簡素なExcelシートに留まり、現場の負荷が高いため十分に機能していないという意見も出ました。
わかったこと③:融資判断を超えた「対話」が目的になっている
金融機関が事業性評価ツールを活用する目的として最も重視しているのは、「顧客の事業内容の深い理解」でした。融資の可否だけでなく、「融資以外の経営支援のきっかけ」や「経営者との対話ツール」として活用されているのです。これは、金融機関が従来の「貸し手」から、企業の未来を共に考える「伴走者」へと役割をシフトさせていることの明確な表れと言えます。
わかったこと④:評価のための作成負荷と評価のバラツキの大きさが最大の課題
アンケート回答者の約2/3が、本部と現場の間で事業性評価に対する意識のギャップを感じていると答えました。このギャップの主な要因として挙げられたのは、現場の担当者に集中する「作成負担」と、評価結果をどう経営支援に活かすかという「活用方法の不明確さ」です。また、時間と労力がかかることや、担当者によって評価にばらつきが生じることも主な障壁として挙げられました。これらの課題は、事業性評価を組織全体で推進していく上での最大の障壁であり、私たちの研究が解決すべき重要なテーマの一つです。
わかったこと⑤:伴走支援の可能性と、支援の偏りという課題
今回の調査では、事業性評価ツールの作成が一度きりで終わらない実態も明らかになりました。半数以上の金融機関が同一企業に対して複数回ツールを作成しており、その8割超が定期的に活用していると回答しています。
この事実は、金融機関が単発の評価ではなく、企業の成長ステージに合わせた中長期的な**「伴走支援」**を志向しているポジティブな側面を示しています。一方で、特定の企業に支援が集中し、その結果として支援の偏りが生じている可能性も示唆していると言えるでしょう。
これらの結果は、単なる数値データではなく、金融機関の皆様が日々直面している現実や、未来への期待を物語っています。
現場の熱気が伝わる!金融機関インタビューから見えた「価値と課題」
アンケートで得られた数値の裏には、現場で奮闘する担当者の生の声があります。今回は、いくつかの金融機関様にご協力いただき、インタビューを実施しました。数値だけでは見えない、現場の熱気と葛藤、そして未来への可能性が浮き彫りになりました。
インタビューでお聞きした事実
本部主導で先進的な取り組みを推進する金融機関
特定の事業性評価ツールの作成を全行員に義務付けたり、担保や保証人に依らない新たな融資商品を立ち上げ、実行に至っている事例がありました。しかし、現場からは「作成に時間と労力がかかる」という声も聞かれています。
事業性評価ツール導入に意欲的な金融機関
過去に評価ツールを全く使ったことがないという現状がある一方、金融庁からの通達を受け、取り組みの必要性を認識し、導入に前向きな姿勢を見せてくださいました。私たちの訪問が、大きな「きっかけ」になったという嬉しい言葉もいただいています。
中小企業診断士への期待と要望
インタビューを通じて、金融機関が診断士に対して非常に高い期待を寄せていることが分かりました。一方で、「ベテランと新人で診断士のスキルレベルに差があり、平準化が望まれる」という率直な意見も出ました。
インタビューから見えた3つの重要な真実
「本部の方針」と「現場の負荷」のギャップ
先進的な取り組みの裏側には、現場の担当者に集中する作成負荷という課題が隠れていました。アンケート結果で明らかになった「本部と現場のギャップ」は、具体的な事例を通じて、より鮮明な課題として浮き彫りになりました。
外部専門家への期待と課題
金融機関は、銀行員だけでは難しい事業の深い理解を、外部の専門家である中小企業診断士に求めていることが明確になりました。しかし、診断士のスキル平準化が連携を強化する上での重要な鍵となることも同時に示されました。
「きっかけ」があれば変われる可能性
事業性評価ツール導入へのハードルは高くても、経営層の意識改革や外部からの働きかけが、大きな「きっかけ」となり得ることが分かりました。これは、私たちの研究活動が、地域の中小企業支援に貢献できる可能性を改めて示唆しています。
アンケート調査で明らかになった「活用の実態」と、インタビューで得られた「現場の熱気と課題」。この二つの羅針盤を組み合わせることで、私たちはより深く、事業性評価の本質に迫ることができました。これらの洞察こそが、次なる調査の指針となります。
第3部:次なる挑戦へ:データと現場の声から導き出した「実践的アプローチ」
第1部で得られた定量的なアンケート結果と、第2部で得られた定性的なインタビュー結果。この二つの羅針盤を組み合わせることで、私たちはプロジェクトを次のフェーズへと進めるための、具体的な道筋を導き出しました。
当初、私たちは中小企業へのインタビューを予定していましたが、アンケート結果から「ツール活用企業がそもそも少ない」という現状が見えてきました。そこで、中小企業に焦点を当てるよりも、より深く実態に迫るために、調査の方向性を大胆に転換することを決定しました。
次なる挑戦は、「事業性評価ツールの作成者(中小企業診断士)」へのインタビュー調査です。私たちは、ツールの「作り手」である支援者自身の視点から、活用における工夫や課題を深く掘り下げます。
このインタビューでは、以下の3つのポイントに焦点を当てて調査を行います。
- 金融機関の「時短」に繋がる工夫:現場の担当者が抱える「作成にかかる時間と労力」という課題に対し、作成者側がどのような工夫をしているのかを探ります。
- バラツキを抑えるための知恵:担当者によって評価にばらつきが生じるという課題に対し、評価の基準やプロセスをどのように標準化しているのか、その知恵を学びます。
- 金融機関への活用提案の勘所:作成したツールや報告書を、金融機関が経営支援に活かすための具体的な「活用提案」をどのように行っているのか、そのノウハウを収集します。
これらの結果は、金融機関が抱える課題を解決し、より効果的な支援モデルを構築するための貴重な示唆を与えてくれるはずです。
まとめ:本質は「対話」にあると信じて
「事業性評価ツールは、単なる評価のためのものではなく、企業との対話を通じて『気づき』を与えるプロセスこそが本質だ」。
会議の最後にメンバーから出たこの言葉は、私たちのプロジェクトの目的を端的に表しています。金融機関が自社の抱える課題に気づき、中小企業が自社の強みに気づき、そして私たち支援者が新たな視点に気づく。この「気づき」の連鎖こそが、兵庫の中小企業を元気にすると信じています。
今後、アンケートのAI分析や、作成者インタビューを通じて、さらに深い洞察を皆様にお届けできるはずです。私たちの挑戦は、皆様と共に、次のステップへと進みます。どうぞ、引き続きご注目ください!