事業性融資推進法と企業価値担保権を踏まえた事業性評価ツールの活用実態調査の必要性

事業性融資推進法と企業価値担保権を踏まえた事業性評価ツールの活用実態調査の必要性

今回の内容は、「事業性融資の推進等に関する法律」(以下、事業性融資推進法)の施行と、同法によって創設された「企業価値担保権」(Enterprise Value Security Interest、以下 EVS)を背景に、事業性評価の重要性が高まっている現状を分析する。特に、兵庫県の「技術・経営力評価制度報告書」、経済産業省等が推進する「知的資産経営報告書」、「ローカルベンチマーク(ロカベン)」、そして内閣府知的財産戦略推進事務局が提供する「経営デザインシート」という4つの主要な事業性評価ツールに着目する。これらのツールが、新たな金融環境において金融機関および中小企業経営者によって実際にどのように活用されているのか(活用実態)を調査することの喫緊の必要性を、両者の視点から論証することを目的とする。

主要な論点として、これらのツールは事業性融資推進法が目指す、担保・保証に過度に依存しない融資慣行への転換と、EVSの活用に不可欠な事業全体の価値、特に無形資産の評価において潜在的な有用性を持つ。しかし、これらのツールが実際にどの程度利用され、その情報が融資判断やリスク管理、経営改善に効果的に結びついているかは未知数である。金融機関にとっては、新たな評価軸の確立、EVSに伴う無形資産評価の具体的手法の模索、リスク管理体制の再構築、実効性のある中小企業支援(本業支援)の提供といった課題に対応する上で、ツールの実態把握が不可欠である。一方、中小企業経営者にとっては、自社の価値、特に無形資産を効果的に金融機関に伝え、資金調達(特にEVS活用)を円滑に進め、銀行との対話を深め、さらには自社の経営戦略を見直す上で、どのツールが有効であり、金融機関にどのように評価されるのかを知ることが極めて重要となる。

結論として、これら4つの事業性評価ツールの活用実態に関する詳細な調査は、事業性融資推進法の効果を最大化し、EVS制度の円滑な導入・普及を図る上で不可欠である。調査結果は、金融機関の融資実務の改善、中小企業の適応戦略の策定、そして政策当局や支援機関による効果的な支援策の立案・実行に向けた重要な示唆を提供するであろう。

目次

1. はじめに:日本の事業性融資におけるパラダイムシフト

1.1. 「事業性融資の推進等に関する法律」の概要

日本の金融実務、特に中小企業向け融資においては、長年にわたり不動産担保や経営者による個人保証(経営者保証)への依存が指摘されてきた。この慣行は、優れた技術やビジネスモデルを有しながらも有形資産に乏しいスタートアップ企業や、経営者保証がネックとなり事業承継や大胆な事業展開を躊躇する中小企業の成長資金調達を阻害する一因とされてきた 1。こうした状況を打開し、企業の事業性、すなわち事業内容や将来性に着目した資金供給(事業性融資)を促進するため、「事業性融資の推進等に関する法律」が2024年6月に成立した 1。同法は公布の日から2年6ヶ月以内に施行される予定である 1

この法律の根幹をなすのは、事業者と金融機関等の緊密な連携の下、事業の継続及び成長発展に必要な資金調達等の円滑化を図るという基本理念である 7。国はこの基本理念に基づき、事業性融資の推進に関する施策を策定・実施する責務を負う 7。具体的な推進体制として、金融庁に金融担当大臣を本部長とする「事業性融資推進本部」が設置され、経済産業大臣、財務大臣、農林水産大臣、法務大臣等が構成員として参加し、基本方針を策定する 7。さらに、事業性融資に関する高度な専門的知見を有し、事業者や金融機関等に対して助言・指導を行う機関を認定する「認定事業性融資推進支援機関」制度も導入される 1。これらの措置は、政府が事業性融資への転換を強力に後押しする姿勢を示すものである。

1.2. 企業価値担保権の登場とその意義

事業性融資推進法の最も注目すべき柱の一つが、新たに創設される「企業価値担保権(EVS)」である 8。これは、従来の不動産等の個別資産を対象とする担保権とは異なり、会社の「総財産」(将来財産を含む)を一体として担保の目的とする、全く新しい概念の担保権である 1。特に、ノウハウ、顧客基盤、知的財産権といった無形資産も担保価値として評価の対象となる点が画期的であり、有形資産に乏しいスタートアップや成長企業等の資金調達円滑化が期待される 1

EVSの設定には、新たに創設される信託業の免許を受けた「企業価値担保権信託会社」との間で信託契約を締結する必要がある 1。この信託会社が担保権者(受託者)となるが、融資を行う金融機関自身が信託会社の免許を取得し、担保権者となることも可能である 1。担保権の効力発生や順位は登記によって定まる 8

重要な特徴として、EVSを活用する場合、債務者の粉飾等の例外を除き、金融機関は経営者保証を徴求することが制限される 1。これは、経営者の個人資産と事業リスクの切り離しを促し、事業承継や思い切った事業展開を後押しする狙いがある。一方で、借り手企業は通常の事業活動の範囲内であれば担保目的財産の処分は基本的に自由であるが、事業譲渡など担保価値に大きな影響を与えうる行為には担保権者の同意が必要となる 1

万が一、債務不履行等により担保権が実行される場合、その手続きは従来の担保権実行とは大きく異なる。裁判所の監督の下、管財人が選任され、事業価値を可能な限り維持するため事業継続を図りつつ、スポンサー等への事業譲渡による換価を目指す 1。その際、事業継続に不可欠な商取引債権や労働債権等が、担保権者である金融機関の債権よりも優先的に弁済される仕組みとなっている 1。最終的に、事業譲渡の対価から融資が回収されることになる 1

このように、EVSは無形資産を含む事業全体の価値を評価し、経営者保証に依存しない融資を可能にする一方で、信託構造や特殊な実行手続きなど、関係者にとって新たな対応が求められる複雑な制度でもある 1

1.3. 事業性評価の重要性の高まり

事業性融資推進法、特にEVSの導入は、「事業性評価」の重要性を飛躍的に高めるものである。EVSは、個別の資産価値の合計ではなく、将来キャッシュフロー創出能力を含む事業全体の価値、とりわけ無形資産の価値を評価し、それを担保とする仕組みである 1。したがって、金融機関は融資判断において、従来の財務諸表分析や担保評価能力に加え、企業のビジネスモデル、技術力、市場での競争力、経営者の資質、組織力といった事業性そのものを深く理解し評価する能力、いわゆる「目利き力」を強化することが不可欠となる 12。金融庁も、金融機関の目利き力向上を課題として認識している 12

一方で、中小企業側も、この新しい金融環境に適応する必要がある。自社の強み、特に特許権、ブランド、顧客基盤、ノウハウといった目に見えにくい無形資産を自ら認識・評価し、それらがどのように将来の収益につながるのかを、金融機関に対して説得力をもって説明(アピール)することが、円滑な資金調達、特にEVSを活用した融資を得るための鍵となる 15

このように、事業性融資推進法とEVSは、金融機関と中小企業の双方に、より高度で包括的な事業性評価への取り組みを促している。しかしながら、その必要性が認識される一方で、具体的に「どのように」事業性評価を実施するのか、特にEVSの評価において既存の評価ツールがどの程度有効に活用されているのか、あるいは活用されうるのかについては、現時点では不明な点が多い。この「評価の実態」に関する不確実性こそが、本報告書が焦点を当てる、4つの主要な事業性評価ツールの活用実態調査の必要性の根源である。

この新しい融資制度への移行は、特に経営者保証の制限という側面から、金融機関にとって避けて通れない課題を突きつける。経営者保証という伝統的なリスクヘッジ手段が制限されることで 1、金融機関は、特にスタートアップや事業承継案件など、従来であれば保証に頼りがちだったセグメントに対して融資を行う場合、代替的なリスク評価・管理手法を確立せざるを得なくなる。その代替手法の中核を成すのが、EVSが対象とする無形資産を含む事業性評価である。したがって、既存の評価ツールがこの「強制的な」評価シフトをどの程度支援できるのか、その実態を把握することは、単なる学術的関心にとどまらず、金融機関の市場対応戦略上、極めて重要な意味を持つ。

さらに、EVSの導入に伴う信託構造や複雑な実行手続き 1 は、新たな課題も提起する。これらの手続きには専門知識や相応のコストが伴う可能性があり、結果として、より高度な管理体制や財務基盤を持つ比較的大規模な企業や金融機関にとっては活用しやすくても、リソースの限られた小規模事業者や地域金融機関にとってはハードルが高くなる恐れがある。これは、SME(中小企業)向け金融市場において、EVSを活用できる層とそうでない層との間に「二極化」を生じさせるリスクを内包する。事業性評価ツールは、本来、EVSの活用を「促進」する役割を期待されるものである。しかし、これらのツール自体が複雑であったり、活用に専門知識を要したりする場合、かえってこの二極化を助長しかねない。したがって、これらのツールが、規模や業種、地域を問わず、多様な主体によって実際にどのように利用されているのか、あるいは利用されていないのかを調査することは、EVSがもたらす可能性のある市場の分断を緩和する上で役立つのか、それとも新たな複雑性のレイヤーを加えることで問題を悪化させるのかを見極める上で不可欠である。

2. 主要な事業性評価ツールの概観

事業性融資推進法とEVSの文脈で注目される事業性評価ツールは多岐にわたるが、本報告書ではユーザーの関心に基づき、以下の4つのツールに焦点を当てる。これらのツールの出自、目的、内容を理解することは、その活用実態調査の必要性を論じる上での前提となる。

2.1. 兵庫県の技術・経営力評価制度報告書

これは、兵庫県及び(公財)ひょうご産業活性化センターが主体となって実施している、地域独自の取り組みである 5。主たる目的は、県内中小企業の技術力、ノウハウ、製品・サービス、そして将来性や経営力といった、財務諸表だけでは捉えきれない企業価値を客観的に評価し、「評価書」として発行することで、企業の自己認識深化、取引先や金融機関へのアピール、そして円滑な資金調達を支援することにある 5

評価は、専門家が現地調査・ヒアリングを行った上で作成され、センターの技術評価支援委員会での審査を経て発行されるため、第三者による公平性・客観性が担保されているとされる 16。評価項目は、例えば「製(商)品・サービス」「市場性・将来性」「実現性・収益性」「経営力」といった複数の視点から構成され、多くの場合、10項目程度の細分化された項目について5段階評価と具体的なコメントが付される 16。企業の強みだけでなく、抱える問題点や改善すべき点についても指摘されるため、経営改善のヒントにもなりうる 16。知的財産の保有状況も評価対象に含まれることがある 17

この評価書は、中小企業にとっては自社の現状把握や対外的な信用補完に役立つだけでなく、金融機関にとっても、融資判断の参考資料、取引先の事業実態や技術・サービスの価値を理解する上での重要な情報源、さらには事業改善支援の基礎資料として活用されている 16。実際に、この評価書の取得を条件とする、あるいは取得企業に対して有利な条件を適用する保証制度も存在しており、資金調達との直接的な連関が見られる 22。なお、評価書の作成には所定の手数料が必要となるが、県による補助や、連携金融機関による費用負担制度も設けられている場合がある 6。大阪府など他の地域でも類似の制度が見られる 18

2.2. 知的資産経営報告書

知的資産経営報告書は、経済産業省や中小企業基盤整備機構(SMRJ)が普及を推進している考え方であり、その作成ガイドラインは2005年頃に策定された 20。ここでの「知的資産」とは、特許権や商標権といった法的な権利(知的財産)のみならず、人材、技術、技能、組織力、経営理念、顧客とのネットワークといった、貸借対照表には表れない企業の競争力の源泉となる無形資産全般を指す 19。知的資産経営とは、これらの自社の強み(知的資産)を認識・評価し、それらを戦略的に活用して業績向上や企業価値創造につなげる経営スタイルである 20

知的資産経営報告書は、この経営実践の内容を、従業員、金融機関、取引先、株主、求職者といったステークホルダーに対して分かりやすく開示するためのツールである 19。その内容は画一的ではないが、一般的には、企業の基本情報や経営理念、過去から現在に至る価値創造のストーリー(どのように知的資産を形成・活用してきたか)、そして現在から未来に向けた価値創造のストーリー(今後の戦略、知的資産の維持・強化・活用方針)といった要素が含まれる 19。SWOT分析などの手法を用いて自社の強み・弱みを分析し、将来の目標設定(KPIなど)を示すことも推奨される 20

この報告書の作成・開示を通じて、企業は自社の経営の全体像や将来性をステークホルダーに伝え、認識の共有を図ることができる 19。これにより、金融機関からの信頼度向上による円滑な資金調達、取引先との関係強化や新規開拓、従業員のモチベーション向上や人材獲得といった効果が期待される 20。特にEVSが注目する無形資産の価値を具体的に示し、その活用戦略を説明する上で、親和性の高いツールと言える。

2.3. ローカルベンチマーク(ロカベン)

ローカルベンチマーク(通称ロカベン)は、経済産業省が提供する、企業の経営状態を把握するための「企業の健康診断ツール」と位置づけられている 27。Excel形式のシートや、中小企業庁運営のWebサイト「ミラサポplus」上で作成可能である 27

ロカベンの最大の特徴は、財務情報と非財務情報の両面から企業を分析・可視化する点にある 27。具体的には、以下の3つのパートで構成される 32

  1. 6つの財務指標: 売上増加率、営業利益率、労働生産性、EBITDA有利子負債倍率、営業運転資本回転期間、自己資本比率。これらの指標を算出し、同業種・同規模の企業と比較することで、企業の財務状況を客観的に把握する 27
  2. 商流・業務フロー: 仕入先から販売先までの商流や、社内の主要な業務プロセスを図式化し、それぞれの段階における自社の強み、こだわり、課題などを書き出す。これにより、企業の価値創造プロセスや競争力の源泉を可視化する 27
  3. 4つの視点(非財務): 経営者自身に関する視点、事業に関する視点、企業を取り巻く関係者(市場、顧客、従業員、金融機関等)に関する視点、内部管理体制に関する視点。これらの観点から自社の状況を整理し、強みや課題を認識する 27

ロカベンは、経営者自身が自社の現状を客観的に把握し、経営課題への「気づき」を得て改善を促すことを主目的とする 27。加えて、金融機関や支援機関との対話において、企業の状況を共有するための「共通言語」としての機能も期待されている 28。実際に、金融機関におけるロカベンの認知度は高く、活用事例も報告されている 29。さらに、国の補助金申請等において、ロカベン活用企業を優先する動きも見られることから、資金調達や公的支援獲得の場面での活用も想定されている 29。定期的な作成・見直しが推奨されており、経営の継続的なモニタリングツールとしての側面も持つ 30

2.4. 経営デザインシート

経営デザインシートは、内閣府の知的財産戦略推進事務局が開発・提供している、企業の将来構想を支援するための思考補助ツール(フレームワーク)である 34。変化の激しい経営環境の中で、企業が持続的に成長するために、自社や事業の「存在意義(パーパス)」を起点として、過去から現在(これまで)の価値創造メカニズムを把握し、将来(これから)のありたい姿を描き、その実現に向けた戦略(今から何をすべきか)を具体化することを目的としている 34

シートは視覚的なフレームワークとなっており、以下の要素を書き込むことで思考を整理・深化させる 34

  • (A) 存在意義・ありたい姿: 企業理念、ビジョン、解決したい社会的課題など。
  • (B) これまで: 過去から現在に至るビジネスモデル、活用してきた経営資源(内部・外部)、提供価値、主要な活動、実績など。
  • (C) これから: 将来実現したいビジネスモデル、必要となる新たな経営資源、提供したい価値、目標とする状態など。
  • (D) 移行戦略: 「これから」の姿を実現するための具体的な戦略、アクションプラン、資源調達方法、KPI、リスク対応策など。

全社レベル、事業レベルの双方で活用可能である 34。経営デザインシートは、単なる現状分析ツールではなく、未来志向で自社の価値創造プロセスを「デザイン」し直すための対話ツールとしての性格が強い。社内での戦略議論やビジョン共有、従業員の意識統一に役立つほか、作成されたシートは、金融機関や連携先、投資家といった外部ステークホルダーに対して、自社の将来性や戦略の方向性を具体的に示すためのコミュニケーションツールとしても活用できる 34。特に、EVSの評価において重要となる「将来キャッシュフロー創出能力」の根拠を、説得力のあるストーリーとして提示する上で有効な可能性がある。

主要な事業性評価ツールの比較概要

これら4つのツールは、それぞれ異なる出自、目的、焦点を持ちながらも、事業性評価という共通のテーマに関わっている。以下の表は、その特徴を比較したものである。

ツール名 (日本語/英語)提供元/出自主な目的主要な内容領域主な焦点想定される主な利用者EVS評価への潜在的関連性
兵庫県 技術・経営力評価制度報告書 (Hyogo Report)兵庫県 / (公財)ひょうご産業活性化センター技術力・経営力等の評価による資金調達支援、企業価値向上技術・製品評価、経営力評価、市場性・将来性評価、スコアリング、コメント、課題指摘、(知財保有状況)地域/技術/経営力中小企業、地域金融機関高(技術力・ノウハウ評価)、中(経営力・将来性評価)
知的資産経営報告書 (Intellectual Asset Management Report)経済産業省 / 中小企業基盤整備機構 (SMRJ) 等無形資産(知的資産)の認識・活用による企業価値向上とステークホルダーへの開示知的資産(人材、技術、知財、組織力、ネットワーク等)の特定・評価、価値創造ストーリー(過去・未来)、SWOT分析、戦略、(KPI)無形資産/戦略中小企業、ステークホルダー(金融機関含む)高(無形資産・知的財産の価値明確化)、高(将来の価値創造ストーリー)
ローカルベンチマーク (Local Benchmark / Locaben)経済産業省企業の「健康診断」、経営状況の可視化、金融機関等との対話促進財務6指標(業界比較)、商流・業務フロー分析、非財務4つの視点(経営者、事業、関係者、内部管理体制)、課題・対応策現状診断/対話促進中小企業、金融機関、支援機関中(財務・非財務の網羅的把握)、中(事業継続性・効率性評価)、低(無形資産の深掘り評価)
経営デザインシート (Management Design Sheet)内閣府 知的財産戦略推進事務局将来の価値創造メカニズムのデザイン、長期ビジョン・戦略策定支援存在意義・ビジョン、価値創造メカニズム(これまで/これから)、資源(内部/外部)、移行戦略、アクションプラン、(KPI)将来戦略/ビジョン中小企業(内部戦略)、ステークホルダー高(将来キャッシュフロー創出能力の根拠提示)、中(戦略実現に必要な資源(無形資産含む)の特定)

この比較からわかるように、各ツールは独自の強みと焦点を持っている。兵庫県報告書は地域密着型で技術・経営力を具体的に評価する一方、知的資産経営報告書はEVSの核心とも言える無形資産に特化している。ローカルベンチマークは財務・非財務を網羅した標準的な診断ツールとして、経営デザインシートは未来志向の戦略構築ツールとして位置づけられる。

これらのツールの多様性は、事業性評価の多面的な性質を反映しているとも言えるが、同時に、金融機関や中小企業がどのツールを、どのような目的で、どの程度深く利用しているのか、という疑問を生じさせる。例えば、地域限定のツール(兵庫県報告書)と全国的に推進されるツール(ロカベン、知的資産経営報告書、経営デザインシート)では、金融機関の認知度や受容度に差がある可能性がある。全国展開する金融機関が、特定の地域ツールをどの程度評価するのか、あるいは全国標準ツールで代替しようとするのかは不明である。また、金融機関が内部で独自に開発した評価手法とこれらの公開ツールとの関係性も明らかではない。このようなツールの出自や普及範囲の違いから生じる利用状況の断片化や非対称性は、事業性評価の実践における潜在的な課題であり、活用実態調査によって明らかにされるべき重要な点である。

さらに重要なのは、EVSが求める評価対象が「総財産」であり、有形・無形資産、現在の収益力、そして将来の成長可能性といった極めて広範な要素を含む点である 1。上記の比較表からも示唆されるように、現存する4つのツールのいずれか一つだけで、この包括的な評価要求を完全に満たすことは難しいかもしれない。例えば、ロカベンは現状把握には優れるが、将来戦略や無形資産の深掘りには限界があるかもしれない。逆に、経営デザインシートは未来を描くが、足元の具体的な経営力評価は他のツールに譲る部分があるだろう。知的資産経営報告書は無形資産に強いが、財務的側面や具体的な技術評価は別途必要となる可能性がある。このことは、高度な事業性評価、特にEVSの評価においては、複数のツールから得られる知見を組み合わせて統合的に判断する必要性を示唆している。しかし、実際に金融機関や先進的な中小企業が、そのような複数のツールを組み合わせた評価を試みているのか、もし試みているならば、どのように異なる情報源からの情報を整理・統合しているのか、あるいは単一のツールに依存してしまっているのか、といった実態は全く分かっていない。この「ツールの組み合わせ・統合利用」の実態を明らかにすることも、活用実態調査の重要な目的となる。

3. 金融機関の視点:ツール活用実態調査の必要性

事業性融資推進法とEVSの導入は、金融機関の融資実務に大きな変革を迫るものである。この変革期において、前述の4つの事業性評価ツールが実際にどのように活用されているかを把握することは、金融機関自身の戦略策定、リスク管理、業務効率化、そして顧客である中小企業との関係構築において、以下に示す複数の理由から極めて重要となる。

3.1. 伝統的指標を超えた借手企業の実行可能性評価

事業性融資推進法は、金融機関に対し、不動産担保や経営者保証といった伝統的な信用補完手段への依存から脱却し、企業の事業内容や成長性そのものに基づいて融資判断を行うことを促している 1。これは、特にスタートアップや新事業展開を目指す企業など、有形資産は少なくとも将来性が期待される企業への資金供給を円滑化するためである 1。しかし、財務諸表だけでは捉えきれない事業の「質」や「将来性」をどのように客観的かつ信頼性をもって評価するかは、金融機関にとって大きな挑戦である。

ここで、事業性評価ツールが潜在的な役割を果たす。ローカルベンチマークは標準化された財務・非財務指標を提供し 28、兵庫県報告書は技術力や経営体制を具体的に評価する 16。知的資産経営報告書や経営デザインシートは、企業の戦略や無形資産の活用状況、将来ビジョンを明らかにする 19。これらのツールは、融資判断に必要な情報を構造化し、評価プロセスを支援する可能性がある。

しかし、問題はこれらのツールが「実際に」どの程度活用され、その情報が融資判断に「どの程度信頼され、影響を与えているか」である。金融機関は以下の点を切実に知る必要がある。

  • 融資申請を行う中小企業は、これらのツールを自発的に作成・提出しているのか、それとも金融機関からの要求があって初めて作成しているのか?
  • 提出される報告書の質はどの程度か?客観性や網羅性は担保されているか?
  • どのツールが、特定の業種や事業ステージの評価において、より有効であると現場で認識されているか?
  • ツールの評価結果は、金融機関内部の格付や貸出条件決定プロセスに、どのように組み込まれているのか?

これらの活用実態を把握することなくして、金融機関は事業性評価に基づく融資判断の精度を高め、新たな融資基準を確立することは困難である。ツールの利用状況を調査することは、金融機関が直面する評価手法確立の課題に対する現実的な解を見出すための第一歩となる。

3.2. 企業価値担保権(EVS)のための無形資産評価

EVSの核心は、特許、ブランド、ノウハウ、顧客基盤といった無形資産を含む事業全体の価値を担保とすることにある 1。これは、金融機関にとって、これまで本格的に取り組んでこなかった無形資産の価値評価という新たな課題を突きつける。EVSに基づく融資額(極度額)の設定や、担保価値の維持・管理、さらには実行時の価値評価において、無形資産の評価は避けて通れない 8

この点において、知的資産経営報告書は、企業が保有する無形資産を特定し、その活用戦略を記述する点で直接的な関連性を持つ 19。兵庫県報告書も技術力の評価を通じて一部の無形資産に光を当てる 16。経営デザインシートは、無形資産を活用した将来の価値創造ポテンシャルを示す上で役立つ可能性がある 34。ローカルベンチマークも、顧客関係や内部プロセスといった非財務情報を通じて、間接的に無形資産の状況を示唆するかもしれない 28

しかし、これらのツールが、EVSという具体的な法的枠組みの下で求められる「無形資産評価」の要求水準を満たすものなのか、金融機関の実務家の目から見て十分な情報を提供しているのかは、全くの未知数である。金融機関は、以下の疑問に対する答えを必要としている。

  • これらのツールは、無形資産の「価値算定」にまで踏み込める情報を提供しているか、それとも定性的な記述にとどまっているか?
  • 中小企業は、EVS利用を念頭に置いて、これらのツールを無形資産評価の目的で活用しているか?
  • 金融機関は、これらのツールから得られる情報を、EVSの担保評価プロセスにどのように組み込んでいるか?あるいは、別途専門家(弁理士、評価機関等)の評価を求めているのか?
  • 特定の種類の無形資産(例:技術特許 vs ブランド価値)の評価において、有効とされるツールに違いはあるか?

EVSの円滑な導入と普及のためには、金融機関が無形資産評価の具体的な手法を確立する必要がある。そのためには、既存ツールがそのプロセスにおいてどの程度有効に機能しているのか、あるいはどのような限界があるのかを、活用実態調査を通じて明らかにすることが不可欠である。

3.3. 新たな融資環境におけるリスク管理

融資の根拠が有形資産担保から事業価値そのものへ移行することは、金融機関のリスクプロファイルにも変化をもたらす。従来の担保価値の変動リスクに加え、事業の業績変動、市場環境の変化、経営戦略の失敗といったオペレーショナルなリスクが、より直接的に融資の回収可能性に影響を与えるようになる。また、EVSの複雑な実行手続き 2 は、法務・手続き上の新たなリスクも伴う。

このような状況下で、事業性評価ツールは、融資実行後のモニタリングツールとしても活用できる可能性がある。例えば、ローカルベンチマークは定期的な「健康診断」として利用することが推奨されており 27、財務・非財務両面での変化を捉えることで、早期警戒シグナルを発見できるかもしれない。知的資産経営報告書や経営デザインシートの更新版は、企業の戦略変更やその進捗状況を把握する手がかりとなりうる 20

しかし、これらのツールが実際に継続的なリスク管理に役立っているかは定かではない。金融機関は以下の実態を知る必要がある。

  • 金融機関は、これらのツールから得られる情報を、既存の信用リスク管理システムやモニタリングプロセスに統合しているか?
  • 中小企業は、融資実行後も定期的にこれらのツールを更新し、金融機関に情報提供を行っているか?
  • これらのツールから得られる定性的な情報(例:経営者の意欲の変化、組織体制の課題)は、将来のデフォルトや業績悪化の予測精度向上に実際に貢献しているか?
  • EVS特有のリスク(例:事業譲渡先の探索難航、優先債権の範囲を巡る紛争)に対して、これらのツールは何か示唆を与えうるか?

新たなリスク環境に対応した実効性のあるリスク管理体制を構築するためには、既存ツールがモニタリングにおいてどのような役割を果たし、どのような限界があるのかを、その利用頻度や金融機関内部システムとの連携状況を含めて調査することが不可欠である。

3.4. 中小企業支援・アドバイザリーサービスの強化(本業支援)

事業性融資推進法は、金融機関と中小企業との「緊密な連携」を基本理念として掲げており 7、単なる資金供給者としてだけでなく、企業の経営課題解決を支援する「本業支援」への取り組みが金融機関に強く期待されている。認定事業性融資推進支援機関の制度化 1 も、この流れを後押しするものである。

事業性評価ツールは、この本業支援の質を高める上でも重要な役割を担う可能性がある。ローカルベンチマークは、企業と支援者(金融機関含む)が同じ目線で対話するための「共通言語」として設計されている 28。知的資産経営報告書や経営デザインシートは、企業の戦略や課題を深く掘り下げるため、より本質的な経営相談のきっかけとなりうる 20。兵庫県報告書も、専門家による客観的な評価と課題指摘が、具体的な改善策の検討につながる可能性がある 16

しかし、これらのツールが実際に、より質の高い対話や効果的なアドバイザリーサービスにつながっているかは疑問符が付く。金融機関は以下の実態を把握する必要がある。

  • これらのツールは、金融機関の担当者(リレーションシップマネージャー)にとって、顧客企業の経営実態やニーズを深く理解する上で、実際に役立っているか?
  • ツールを用いた対話は、形式的なものにとどまらず、具体的な経営改善提案やソリューション提供(例:ビジネスマッチング、専門家紹介)につながっているか?
  • 中小企業側は、ツールを活用した金融機関からのアドバイスを、有益なものとして受け止めているか?
  • ツール作成・分析のプロセス自体が、金融機関と中小企業の間の信頼関係構築に寄与しているか?

単にツールが利用されているという事実だけでなく、それが金融機関と中小企業の間のコミュニケーションの質を向上させ、真に価値のある本業支援へと結びついているのかどうか、その「質的側面」を調査することが、政策が期待する効果が発現しているかを測る上で重要である。

3.5. 標準化・信頼性のある評価枠組みの必要性

多様な事業性評価ツールが存在し、かつEVSという複雑な制度が導入される中で、金融機関は、異なる借手企業や担当者間での評価の一貫性・比較可能性をいかに担保するかという課題に直面する。評価基準がバラバラでは、効率的な融資判断やリスク管理は困難である。

ここで、特定のツール、特に全国的に推進されているローカルベンチマーク 27 などが広く普及すれば、事実上の標準(デファクトスタンダード)となり、評価プロセスの効率化や比較可能性の向上に寄与する可能性も考えられる。

しかし、現状はどうなっているのか。金融機関は以下の点を明らかにする必要がある。

  • 現場レベルで、どのツールが最も頻繁に利用され、支持を集めているのか?特定のツールへの収斂傾向は見られるか?
  • 金融機関は、これらの公開ツールをそのまま利用しているのか、それとも自社の内部基準や評価モデルに合わせてカスタマイズしたり、独自のツールと併用したりしているのか?
  • ツールに基づく評価の質を担保するために、金融機関内でどのような品質管理(QC)プロセスや担当者への研修が行われているか?
  • 異なるツールを用いた評価結果を、どのように比較・統合しているのか?

評価の標準化と信頼性の確保は、金融機関のオペレーション効率とリスク管理の観点から不可欠である。どのツールが普及し、どのように利用されているのか、そして評価の質をどのように担保しようとしているのか、その実態を調査することは、今後の評価手法の標準化や高度化に向けた議論の基礎となる。

金融機関がこれらのツールを効果的に活用する上での潜在的な障壁として、「目利き力」に関する能力ギャップが挙げられる 12。事業性評価、特に定性情報や戦略の解釈には、従来の財務分析とは異なるスキルセットが求められる。金融機関の担当者が、これらの多様なツール、特に知的資産経営報告書や経営デザインシートのような物語的・戦略的な要素を含むツールを深く理解し、その情報を的確に評価・活用するための専門性や経験が不足している可能性は否定できない。活用実態調査を通じて、金融機関が実際にどのツールを、どの程度の深さで利用しているか(例えば、チェックリスト的な利用にとどまっているのか、戦略的な議論にまで踏み込んでいるのか)を明らかにすることは、この能力ギャップの深刻度を測り、必要な研修プログラムや、認定事業性融資推進支援機関 1 のような外部専門家への依存度を見極める上で重要となる。

さらに、金融機関がこれらのツールを利用する動機についても注意が必要である。政府が特定のツール(特にロカベン)の利用を推奨し、KPIとして設定している場合 28、金融機関は、規制当局への対応や目標達成のため、形式的にツールを利用するインセンティブを持つ可能性がある。このような「コンプライアンス目的」の利用は、ツールの本来の目的である深い企業理解やリスク評価、関係性強化には必ずしもつながらない。真に融資判断の質向上や中小企業支援に貢献すると信じてツールを活用しているのか、それとも表面的な対応にとどまっているのか。活用実態調査においては、単に利用の有無だけでなく、その利用の「深さ」や「動機」(例えば、ツールが内部の信用格付モデルに組み込まれているか、単独の参考資料として扱われているかなど)を探ることで、この本質的な違いを見極める必要がある。この点は、事業性融資推進法の政策効果が実質的なものとなるかを見極める上で、決定的に重要である。

4. 中小企業経営者の視点:ツール活用実態調査の必要性

金融機関だけでなく、中小企業の経営者にとっても、事業性評価ツールの活用実態、特に金融機関がそれらをどのように評価し、利用しているのかを理解することは、新たな金融環境を乗り切る上で不可欠である。以下に、中小企業経営者の視点から見た調査の必要性を詳述する。

4.1. 資金調達のための事業価値・無形資産の明確化

事業性融資推進法の下で、特にEVSを活用した資金調達を目指す場合、中小企業は自社の事業価値、とりわけ特許、ブランド、ノウハウ、顧客基盤といった無形資産の価値を、金融機関に対して効果的に示す必要に迫られる 1。有形資産が乏しい企業にとっては、これが生命線となる。

事業性評価ツールは、この課題に対応するための構造化された手段を提供する。兵庫県報告書は技術的な強みを客観的に示し 16、知的資産経営報告書は保有する無形資産とその活用戦略を物語る 19。ローカルベンチマークは非財務面の強みを整理し 28、経営デザインシートは将来の成長ビジョンを描き出す 34

しかし、中小企業経営者にとって切実な問題は、「どのツールが、どの金融機関に対して、最も効果的なのか?」という点である。限られた経営資源(時間、労力、費用)をどのツールの作成に投入すべきか判断するためには、以下の実態を知る必要がある。

  • 金融機関は、融資審査において、これら4つのツールをどの程度重視しているのか?特定のツールを好む傾向はあるか?
  • 例えば、詳細な知的資産経営報告書を作成する労力は、実際の融資条件交渉において報われる可能性が高いのか?
  • 各ツールの提出は、融資審査の迅速化に貢献するのか?
  • 金融機関は、中小企業が作成した報告書の信頼性をどのように評価しているのか?

中小企業が自社の価値を的確に伝え、円滑な資金調達を実現するためには、金融機関側のツールの受容度や評価基準に関する実態情報が不可欠である。活用実態調査は、中小企業が取るべき効果的なコミュニケーション戦略を策定するための重要なインプットとなる。

4.2. 金融機関との対話促進と信頼構築

事業性融資の推進には、金融機関と中小企業の間の「緊密な連携」と相互理解が不可欠である 7。中小企業経営者は、単なる決算書の数字だけでなく、自社の事業内容、強み、課題、将来展望について、金融機関と深く対話し、信頼関係を構築していく必要がある 28

事業性評価ツールは、この対話を促進するための媒体となりうる。ローカルベンチマークは「共通言語」として設計され 28、知的資産経営報告書や経営デザインシートは戦略的な議論の土台を提供し 20、兵庫県報告書は第三者の視点からの評価を提供することで客観性を担保する 16

しかし、これらのツールを利用することが、実際に金融機関との関係性向上に繋がっているかは定かではない。中小企業経営者は以下の点を把握する必要がある。

  • これらのツールを積極的に作成・提示する中小企業に対して、金融機関は好意的な印象を持つのか?
  • 例えば、ロカベンシートや知的資産経営報告書を提示することで、金融機関との面談はより生産的になり、深い相互理解につながるのか?それとも、金融機関は独自のヒアリングや情報収集方法を優先するのか?
  • ツールを用いた対話を通じて、金融機関からの経営アドバイスの質は向上するのか?
  • ツール作成のプロセスを金融機関と共有することは、信頼関係の構築に有効か?

中小企業にとって、これらのツールへの投資が、単なる書類作成にとどまらず、金融機関との良好な関係構築というリターンをもたらすのかどうかを見極めることは重要である。活用実態調査は、ツールがコミュニケーションツールとして実際に機能しているかを評価する上で役立つ。

4.3. 経営戦略策定と事業改善への活用

事業性評価ツールは、金融機関への提出という対外的な目的だけでなく、中小企業自身の経営を見つめ直し、改善するための内省的なツールとしても価値を持つ 16。自社の強み・弱みの客観的な把握、経営課題の特定、将来ビジョンの明確化、戦略的な優先順位付けなどに役立つ可能性がある。

しかし、中小企業がこれらのツールをどの程度、内向きの目的で活用しているかは不明である。経営者は以下の実態に関心を持つだろう。

  • 中小企業は、これらのツールを主に内部的な戦略策定のために利用しているのか、それとも外部(特に金融機関)への説明責任のために利用しているのか、あるいはその両方か?
  • 内部的な経営改善という観点から、どのツールが最も有益であると認識されているか?
  • 例えば、融資申請のためにロカベンを作成した結果、それがきっかけとなって具体的な業務改善やコスト削減につながった事例はあるか?
  • ツール作成のプロセスを通じて、社内(経営層と従業員間)でのコミュニケーションや目標共有が促進される効果はあるか?

中小企業経営者が、これらのツール導入の是非を判断する際には、資金調達への効果だけでなく、自社の経営力強化にどの程度貢献するのかという視点も重要となる。活用実態調査は、ツールが持つ「内部的な価値」が実際にどの程度引き出されているのかを明らかにすることができる。

4.4. 企業価値担保権(EVS)要件への対応

EVSは中小企業にとって新たな資金調達の選択肢となる可能性がある一方、その利用には金融機関による詳細な事業性評価が伴うことが予想される。特に、信託構造や複雑な実行手続き 1 を考慮すると、金融機関はより慎重な審査を行う可能性がある。

この状況で、中小企業経営者は、EVSを利用する際に、金融機関からどのような情報開示や評価資料の提出を求められるのかを知る必要がある。

  • 金融機関は、EVSの検討にあたり、これら4つの事業性評価ツールのいずれか、あるいは複数(例えば、知的資産が多い企業には知的資産経営報告書、将来計画が重要な企業には経営デザインシートなど)の提出を事実上の前提条件としているのか?
  • もしそうであれば、どのツールが特に重要視される傾向にあるのか?
  • ツール提出以外に、EVS特有の要求事項(例:無形資産に関する専門家の評価書、将来キャッシュフロー計画の詳細な説明)はあるのか?

EVSという新しい制度を円滑に活用するためには、中小企業はその「入口」となる評価プロセスにおいて何が求められるのかを正確に理解する必要がある。活用実態調査は、事業性評価ツールの利用とEVSアクセスとの間の具体的な関連性を明らかにし、中小企業が取るべき準備についての指針を提供する。

4.5. 成長と持続可能性のためのツール活用

事業性評価ツールの価値は、短期的な資金調達にとどまらない。自社の強みや戦略を明確にすることは、事業提携、M&A、優秀な人材の獲得、事業承継といった、より長期的な成長と持続可能性に関わる課題への対応にも貢献しうる 20。例えば、BCP(事業継続計画)策定支援と連携しているケースも見られる 22

しかし、中小企業がこれらのツールを、資金調達以外のより広範な戦略的目的で活用している実態はどの程度あるのだろうか。

  • 例えば、知的資産経営報告書が、M&Aの際の企業価値評価やデューデリジェンスの資料として活用されている事例はあるか?
  • 経営デザインシートが、中期経営計画の策定や、従業員へのビジョン浸透、あるいは採用活動における企業魅力のアピールに利用されているか?
  • ローカルベンチマークの分析結果が、サプライチェーンの見直しや新たな販路開拓の検討に繋がっているか?

中小企業経営者がこれらのツールの導入効果を最大化するためには、資金調達以外の多様な活用可能性とその実例を知ることが有益である。活用実態調査は、これらのツールが中小企業の持続的成長にどの程度貢献しているのか、その潜在能力が十分に引き出されているのかを評価する材料を提供する。

中小企業が金融機関に対して自社の価値を伝える際、特に伝統的な担保が不足している場合には、「シグナリング」の問題に直面する。つまり、自社がいかに優良であり、将来性があるかを、信頼できる形で金融機関に伝えなければならない。事業性評価ツールの作成・提出は、そのためのシグナルとなりうる。しかし、これらの報告書作成には相応の時間、労力、場合によっては外部コンサルタント費用などがかかる 17。このコストは、シグナルを発するための「投資」と見なすことができる。中小企業経営者にとって重要なのは、この投資が金融機関に正しく解釈され、報われるかどうかである。つまり、金融機関は、質の高い知的資産経営報告書の提出を、真の経営能力や将来性の証左と受け取るのか、それとも単にコンサルタントを雇う資力があることの証としか見なさないのか。活用実態調査を通じて、これらのツール利用が実際に融資条件の改善や承認確率の向上にどの程度結びついているのかを明らかにすることは、中小企業がこのシグナリング戦略の有効性(投資対効果)を判断する上で不可欠である。

さらに、中小企業の間でのこれらのツールの「認知度」と、それらを効果的に「活用する能力」との間には、大きなギャップが存在する可能性がある。政府機関などがツールの普及に努めている一方で 31、多くの中小企業は日々の業務に追われ、これらのツール、特に知的資産経営報告書や経営デザインシートのような戦略的思考や深い分析を要するものを、十分に時間をかけて質高く作成するためのリソース(時間、人材、専門知識)が不足しているかもしれない。活用実態調査においては、単にツールが利用されているか否かだけでなく、その「質」や「作成プロセス」(例えば、経営者自身が主体的に関与しているか、外部の支援をどの程度利用しているか 13)にも注目する必要がある。これにより、中小企業におけるツール活用の実質的な障壁がどこにあるのか(単なる認知不足なのか、能力・リソース不足なのか)を特定し、より効果的な普及・支援策を検討するための基礎情報が得られる。

5. 統合分析:ツール、政策、実務のギャップを埋める

金融機関と中小企業の双方の視点から事業性評価ツールの活用実態調査の必要性を検討してきたが、ここでは両者の視点を統合し、ツール、政策(事業性融資推進法・EVS)、そして現場の実務の間に存在する可能性のあるギャップや連携の可能性について考察する。

5.1. ツール間の潜在的な相乗効果と重複

前述の比較表(セクション2.5)が示すように、4つのツールはそれぞれ異なる強みと焦点を持っている。これは、ツール間で相互補完的な関係が成り立つ可能性を示唆している(セクション2.5の考察参照)。例えば、以下のような組み合わせ利用が考えられる。

  • まずローカルベンチマークで企業全体の「健康状態」を把握し、課題領域を特定する。
  • 特定された課題が技術力や経営管理体制にあれば、兵庫県報告書(あるいは類似の地域評価制度)で詳細な評価を得る。
  • 無形資産の価値や活用が鍵となる場合は、知的資産経営報告書でその内容を深掘りする。
  • 将来の成長戦略や事業転換が焦点となる場合は、経営デザインシートを用いてビジョンと実行計画を具体化する。

このように、複数のツールを段階的あるいは並行的に活用することで、EVSが求めるような多面的・包括的な事業性評価に近づける可能性がある。

一方で、ツール間には内容的な重複も存在する可能性がある。例えば、SWOT分析は知的資産経営報告書 20 や他の経営計画ツールでも用いられる一般的な手法である。ローカルベンチマークの非財務情報(特に内部管理体制や関係者の視点)28 は、兵庫県報告書の経営力評価 16 や知的資産経営報告書の組織力に関する記述 19 と重なる部分があるかもしれない。

このような相乗効果の可能性と重複の存在を踏まえた上で、活用実態調査は以下の点を明らかにする必要がある。

  • 金融機関や中小企業は、これらのツール間の相補性を認識し、戦略的に組み合わせて利用しているか?
  • それとも、ツールの重複による非効率性や混乱を感じているか?
  • 特定のツールの利用が、他のツールの利用を促進する、あるいは阻害するような関係性はあるか?(例:ロカベンで課題が見つかったため、より詳細な知的資産経営報告書を作成する、など)
  • 複数のツールを利用する場合、それらの情報をどのように統合し、最終的な評価や意思決定に結びつけているのか?

ツール間の関係性を実務レベルで理解することは、より効率的で効果的な事業性評価プロセスの設計につながる。

5.2. 実用化と普及における課題

これらの事業性評価ツールが、事業性融資推進法やEVSの目的達成に貢献するためには、現場で広く、かつ効果的に活用される必要がある。しかし、その実用化と普及には、以下のような様々な課題が潜在的に存在すると考えられる。

  • 認知度と理解度: 金融機関の担当者や中小企業経営者は、これら4つのツール全てについて、その目的や内容、活用方法を十分に理解しているか?特に比較的新しいツールや特定の省庁が推進するツールについては、認知度に偏りがある可能性がある。
  • コストと労力: 中小企業にとって、質の高い報告書を作成するための時間的・人的コスト、場合によっては外部専門家への費用負担 17 はどの程度か?金融機関にとっても、これらの(特に定性的な)報告書を詳細に分析・評価するためのコストは無視できない。これらのコストに見合うだけのメリット(融資条件改善、経営改善効果など)が認識されているか?
  • 複雑性: EVS自体が複雑な制度である上に 1、これらの評価ツール、特に複数のツールを組み合わせて利用する場合、融資プロセス全体の複雑性を増大させてしまう懸念はないか?
  • 標準化 vs. 個別性: 金融機関は比較可能性のためにある程度の標準化を求める一方、中小企業は自社の独自性や特殊性を評価してほしいと考える。これらのツールは、この二つの要求のバランスをどのように取っているか?あるいは、どちらか一方に偏っていないか?
  • 能力ギャップ: 前述の通り、金融機関側には定性情報や戦略を評価する能力 12、中小企業側には質の高い報告書を作成する能力について、それぞれギャップが存在する可能性がある。

活用実態調査を通じて、これらの課題がどの程度深刻であり、どの課題がツールの普及を最も妨げているのかを定量・定性的に把握することが、効果的な対策を講じる上で不可欠である。例えば、ツールの採用率、作成・分析に要する時間、報告された困難点などを調査することで、課題の優先順位付けが可能となる。

5.3. 支援機関の役割

事業性融資推進法は、事業性融資やEVSの活用を支援するために、「認定事業性融資推進支援機関」という新たな枠組みを設けた 1。これらの認定機関や、既存の地域支援機関(例:ひょうご産業活性化センター 6)、商工会議所、中小企業診断士、弁理士、税理士などの専門家は、事業性評価ツールの活用促進においても重要な役割を果たすことが期待される。

具体的には、以下のような機能が考えられる。

  • 中小企業に対するツール作成支援(情報整理、分析、報告書作成代行など)
  • 金融機関に対するツール解釈支援や評価の補助
  • 無形資産評価など、特定の専門分野に関する評価サービスの提供
  • ツール活用に関するベストプラクティスの収集・共有、セミナー等の開催による普及啓発

しかし、これらの支援機関が実際にどの程度機能し、事業性評価ツールの活用に関与しているかは不明である。活用実態調査は以下の点を明らかにする必要がある。

  • 認定事業性融資推進支援機関は、具体的にどのような支援メニューを提供し、どの程度利用されているのか?
  • これらの支援機関は、本報告書で取り上げた4つのツールについて、専門的な知見を持ち、活用を推奨・支援しているか?
  • 支援機関の関与は、中小企業による質の高い報告書作成や、金融機関による適切な評価に、実際に貢献しているか?
  • 支援機関は、金融機関と中小企業の間の「能力ギャップ」を埋める役割を効果的に果たせているか?

事業性融資推進法が意図するエコシステム全体が円滑に機能するためには、支援機関がその役割を適切に果たしているかを確認することが重要である。ツールの活用実態と支援機関の活動実態を併せて調査することで、支援体制の有効性や課題を評価することができる。

事業性融資推進法とEVSの成功は、突き詰めれば、金融機関と中小企業の間で、財務情報と非財務情報を効果的に統合した事業性評価に関する共通理解と実践的な方法論が確立されるかどうかにかかっていると言っても過言ではない。現状、異なる出自と焦点を持つ複数のツールが併存している状況は、そのような共通理解がまだ形成されていないことを示唆している。活用実態調査は、まさにこの現状を把握し、どのツールやアプローチが現場で有効とされ、どのような課題があるのかを明らかにすることで、将来、より統合的で実効性のある評価フレームワークやガイドラインを開発するための第一歩となる。

さらに重要なのは、ツール活用を巡る金融機関と中小企業の間の相互作用である。もし金融機関がこれらのツールから得られる情報を信頼せず、融資判断に実質的に活用しないのであれば、中小企業は手間とコストをかけて質の高い報告書を作成するインセンティブを失い、結果としてツールの利用は低調になるだろう。逆に、中小企業が提出する報告書の質が低い、あるいは形式的なものであれば、金融機関はそれらを信頼せず、ますます担保や保証に頼る傾向を強めるかもしれない。このような「負のフィードバックループ」は、事業性融資推進という政策目標そのものを形骸化させかねない。活用実態調査は、このループがどの段階で機能不全に陥っているのか(例:金融機関側の懐疑心、中小企業側の能力不足、ツールの設計自体の問題など)を診断し、どこに介入(例:研修の強化、ツールの標準化・簡素化、支援体制の拡充など)すれば、信頼と価値創造の「正のフィードバックループ」を生み出せるのかを見極めるための重要な手段となる。

6. 結論と戦略的提言

6.1. 調査の重要性の再確認

本報告書で詳述してきた通り、「事業性融資の推進等に関する法律」の施行と「企業価値担保権(EVS)」の創設は、日本の金融実務における大きな転換点であり、企業の事業性、特に無形資産を含む事業全体の価値を評価することの重要性を飛躍的に高めた。兵庫県の「技術・経営力評価制度報告書」、「知的資産経営報告書」、「ローカルベンチマーク」、「経営デザインシート」という4つの主要な事業性評価ツールは、この新たな評価ニーズに応える潜在的な可能性を秘めている。

しかしながら、これらのツールが金融機関および中小企業によって実際にどのように利用され(活用実態)、どの程度効果を発揮しているのか、そしてEVSのような新しい制度の文脈でどのように位置づけられているのかは、現時点では極めて不透明である。この「実態」を明らかにすることなくして、事業性融資推進法の政策効果を正確に評価し、EVS制度の円滑な普及を図ることは困難である。金融機関の視点からは、新たな融資判断基準の確立、無形資産評価手法の開発、リスク管理体制の再構築、実効性のある本業支援の提供といった喫緊の課題に対応するために、ツールの現実的な有効性と限界を知る必要がある。中小企業の視点からは、限られたリソースの中で、どのツールを活用することが資金調達、金融機関との関係構築、そして自社の経営改善に最も効果的なのかを見極める必要がある。

したがって、これら4つの事業性評価ツールの活用実態に関する詳細かつ網羅的な調査を実施することは、関係者全てにとって喫緊の課題であり、今後の政策・実務の方向性を決定する上で不可欠な情報基盤を提供すると結論付ける。

6.2. 金融機関への提言

今後実施されるであろう活用実態調査の結果を待つまでもなく、金融機関は事業性評価能力の向上に向けて主体的に取り組む必要があるが、調査結果はその取り組みの方向性をより的確にするであろう。調査によって、例えば特定のツールの利用が低調であることや、担当者の能力ギャップ、評価基準の不統一といった実態が明らかになることを想定し、以下の戦略的行動を検討すべきである。

  • 人材育成への投資: 財務分析能力に加え、非財務情報(特に無形資産や戦略)を読み解き、評価する能力を持つ人材の育成が急務である。多様な評価ツールの特性を理解し、それらを批判的に吟味し、融資判断やアドバイスに活かすための研修プログラムを強化する必要がある。
  • 内部ガイドラインの明確化: 各事業性評価ツールから得られる情報を、内部の信用格付プロセスやEVSを含む融資条件決定プロセスにどのように反映させるか、明確なガイドラインを策定・共有する必要がある。これにより、評価の一貫性と透明性を高める。
  • 支援機関との連携強化: 無形資産評価など、自行内に十分な専門性がない分野については、認定事業性融資推進支援機関や外部専門家との連携体制を構築し、積極的に活用することを検討すべきである。
  • 中小企業へのフィードバック: どのツールや情報が融資判断や対話において特に有用であったか、あるいは改善が必要な点は何かを、中小企業に対して具体的にフィードバックする仕組みを設ける。これにより、中小企業のツール作成努力を適切な方向へ導き、コミュニケーションの質を高める。

活用実態調査の結果は、これらの取り組みの優先順位付けや具体的な内容の設計に、客観的な根拠を与えるだろう。

6.3. 中小企業への提言

中小企業経営者もまた、事業性評価ツールの活用実態調査の結果を待つだけでなく、自社の価値向上と円滑な資金調達に向けて能動的に行動する必要がある。調査によって、例えば金融機関が特定のツールを重視する傾向や、ツール作成における共通の課題などが明らかになることを想定し、以下の戦略的アプローチを推奨する。

  • 金融機関との対話を通じたニーズ把握: 主要な取引金融機関に対して、どの事業性評価ツールに関心があり、どのような情報を重視するのかを、積極的にヒアリングし、理解を深める。画一的な対応ではなく、相手に合わせた情報提供を心がける。
  • 「質」の重視: 単にツールを完成させること(形式)だけでなく、その内容(実質)にこだわる。自社の強み、課題、戦略を客観的かつ具体的に記述し、説得力のあるストーリーを構築することが重要である。
  • 内部活用との両立: ツール作成を、単なる外部提出用の作業と捉えず、自社の経営課題の発見、戦略の見直し、社内での目標共有といった内部的な経営改善プロセスとして積極的に活用する。
  • 支援の活用: ツール作成に困難を感じる場合、あるいはより質の高い報告書を目指す場合は、地域の支援機関、商工会議所、中小企業診断士などの専門家の支援を積極的に求めることを検討する。

活用実態調査の結果は、中小企業がこれらの戦略を実行する上で、どの点に注力すべきか、どのような支援を求めるべきかについての具体的な示唆を与えるだろう。

6.4. 政策立案者・支援機関への提言

政府、地方自治体、そして認定事業性融資推進支援機関を含む各種支援機関は、事業性融資推進法の実効性を高め、EVS制度を円滑に普及させる上で、中心的な役割を担う。活用実態調査の結果は、これらの主体が取るべき政策や支援策をより効果的なものにするための重要なエビデンスとなる。調査によって、例えばツール間の利用度の偏り、中小企業の利用障壁、支援体制の有効性に関する課題などが明らかになることを想定し、以下の行動を提言する。

  • ツールの普及啓発とガイダンス: 各ツールの目的、特徴、活用方法、そしてツール間の連携可能性について、金融機関と中小企業の双方に対して、より分かりやすく、具体的なガイダンスを提供する。成功事例の共有なども有効である。
  • アクセシビリティの向上: ツール作成にかかる中小企業の負担(コスト、労力)を軽減するための支援策(補助金、専門家派遣、簡易版ツールの開発など)を検討・拡充する。
  • 継続的なモニタリングと改善: ツールの利用状況、利用者からのフィードバックを継続的に収集・分析し、ツールの内容や提供方法、関連する支援策を不断に見直し、改善していく仕組みを構築する。
  • ベストプラクティスの共有促進: 金融機関、中小企業、支援機関の間で、ツール活用に関する成功事例やノウハウを共有するためのプラットフォーム(研究会、事例集、オンラインフォーラムなど)を構築・運営する。
  • 支援機関の機能強化と評価: 認定事業性融資推進支援機関を含む支援機関が、事業性評価ツールの活用支援やEVS関連アドバイスにおいて、期待される役割を効果的に果たしているかを定期的に評価し、必要に応じて機能強化策(研修、情報提供、連携促進など)を講じる。

活用実態調査は、これらの政策・支援策が、現場のニーズや課題に即した、真に効果的なものとなるための不可欠な羅針盤となるであろう。

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この記事を書いた人

長年大手電機メーカーで培った技術と市場洞察を活かし、中小企業診断士として独立後15年、経営コンサルタントとして成長戦略と課題解決を支援。しかし、事業性評価に基づく資金調達の難しさに課題を感じ、「事業性評価ツールマガジン」を構想。この情報サイトが、中小企業経営者や金融機関、支援者の皆様の未来を拓く一助となれば幸いです。

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