皆様、こんにちは!事業性評価ツールマガジンの管理人、中小企業診断士の西本です。
「データと現場の声」という二つの道を歩んできた私たちの調査研究プロジェクトは、ついにその集大成となる段階に入りました。第8回会議(9/27開催)は、プロジェクト開始以来初となる対面でのリアル討論会。神戸駅前の会場にメンバーが集結し、これまでに収集した143件のアンケートと複数のインタビューから導き出された「課題の核心」を徹底的に議論しました。
この会議の結論は、単なる報告書の作成に留まらず、「ツールではなく、人に投資せよ」という、兵庫県の中小企業支援の未来を大きく変える提言の骨子となります。その議論の内容を一部紹介していきましょう。
データが示す「課題の核心」— ツールではなく「人」にあり
会議の冒頭では、西本がアンケートとインタビューの全データを統合した最終レポートをおさらいしました。そこで浮き彫りになったのは、理想と現実、そして本部と現場の間に存在する深刻な「断絶」の構造でした。
1. 金融機関アンケートが語る「深刻なボトルネック」
金融機関の回答者属性を見ると、支店勤務者(43%)や次長・課長クラス(35%)が多く、融資・経営支援・営業を兼務する「一人三役」の状況にあることが判明しました。この多忙な現場において、導入の最大の障壁は「ツールの作成に時間がかかる」(圧倒的多数)ことでした。
- 目的のシフト: 事業性評価の目的は、従来の与信判断から「顧客企業の事業内容の深い理解」へと明確にシフト。
- 重視する視点: 評価の核となる非財務情報として、「経営者の資質・経営能力」が約半数を占め、事業の将来性を大きく引き離しました。
- 課題の核心: 回答者の6割以上が本部と現場にギャップを感じる中、今後の強化点として「行員の事業性評価能力の向上」が83.2%と突出。データは、課題がツール自体ではなく、「人」と「リソース」にあることを明確に示しました。
2. 専門家インタビューが暴く「支援の断絶」
中小企業診断士へのインタビューでは、ツールの運用におけるより構造的な問題が明らかになりました。
- 共通の病巣:「やりっぱなし」ローカルベンチマークは企業の自発的依頼がなく「やらされ仕事」になり、技術・経営力評価は対話のない「通信簿」と化し、「報告書を渡してさようなら」という作成後のフォローアップ不在が共通の課題として指摘されました。
- 品質を支える「自己犠牲」技術評価の品質は、一部の専門家の「自己犠牲」によって支えられている実態も浮き彫りに。また、知的資産経営報告書は「つくる過程にこそ価値」があるものの、時間とコストがかかり、専門家のスキルに依存する「属人性」が避けられないことが確認されました。
議論の山場 — 報告書で斬り込むべき「断絶」の構造
共有されたデータとインタビュー結果に基づき、報告書で最も重きを置くべき論点とその解決策について、熱いディスカッションが繰り広げられました。
1. 本部と現場の「深刻な断絶」
メンバーからは、「アンケート結果以上に、本部と現場の断絶は深刻な実態がある可能性が高い。現場は真剣に企業を見たいと考えているが、本部がその時間と労力を評価しない構造がある」という意見が出されました。
この構造的課題に対し、報告書では本部側の理解を促す視点と、現場の努力が報われるための具体的な評価制度を提言する必要があることが確認されました。
2. 課題解決の方向性 — 「プロセス評価」と「伴走支援」の制度化
議論は、課題解決のための具体的な施策へと進みました。
- 評価制度の改革: ツールの作成件数ではなく、企業との対話や行動変容といったプロセスを評価するKPIを導入すべきであるという意見で一致しました。
- スキルアップの推進: 金融機関がローカルベンチマークなどの「入口のツール」を使いこなせるよう、金融機関内での業種別担当者育成研修や、金融機関と診断士の合同研修を実施する必要性が強調されました。
- 公的機関の役割: 県などの公的機関が、金融機関と専門家の連携を促す**ハブ機能(課題共有の機会づくりなど)**を担う必要性が強く主張されました。
これにより、ツールの役割を明確化し、評価後の行動変容を促すフィードバック支援(伴走支援)を制度化するという方向性が固まりました。
最終報告書の「未来図」決定と執筆スケジュールの確定
いよいよプロジェクトの最終目標である調査研究報告書の構成案が承認され、執筆担当が決定しました。
1. ストーリー性を重視した目次構成
報告書のタイトルと構成は、読者がスムーズに結論に至れるよう、「理想→事実→分析・課題→解決策」というストーリー性を重視した流れで承認されました。
- 報告書タイトル: 「中小企業の生産性向上を実現する事業性評価ツールの活用モデルの調査研究報告書 ~兵庫県における金融機関との連携支援への新提案~」
- 執筆担当の決定: 各章の担当者が決定し、プロジェクトはいよいよ執筆フェーズへ移行しました。特に、課題の核心を分析する第4章は、原氏(目的の断絶)、藤原氏(ツールの断絶)、上田氏(支援の断絶)、冨松氏(ボトルネック構造)がそれぞれ担当し、多角的な視点から課題を浮き彫りにします。
2. 最終報告会に向けた執筆スケジュール
11月14日の報告会に向けて、以下のタイトな執筆スケジュールが確認されました。
- 執筆締切: 10月13日(月)24時
- 全体チェック: 10月19日までに実施し、10月26日までに最終チェックを完了
データ分析と議論を重ねてきた集大成が、いよいよ一つの「形」となります。次回以降の進捗は、完成した報告書の内容を具体的に皆様にお伝えするフェーズとなります。
引き続き、私たちの挑戦にご注目ください!

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