皆様、こんにちは!事業性評価ツールマガジンの管理人、中小企業診断士の西本です。
143件のアンケートとすべてのインタビュー分析を完了したため、私たちのプロジェクトは次の段階へと移行しました。それは、データが示す課題と現場の声を結びつけ、「兵庫県への具体的な政策提言」と「現場で使える事業性評価活用モデル」という二つの集大成を創り出すことです。
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第7回会議(9/19開催)では、いよいよ報告書の「魂」となる論点整理と提言の骨子固めに着手。特に、金融機関と専門家がどのように連携し、中小企業を支援していくべきかという「役割分担」の議論が白熱しました。
分析結果の共有 — 浮き彫りになった「構造的課題」
会議冒頭、西口リーダーから前日に行った兵庫県庁訪問の結果が報告されました。提言案に加え、県側から「事業承継支援」の視点を強化するよう要望があったことが共有され、報告書に盛り込むべきテーマが一つ増えました。
次に、専門家(中小企業診断士)へのインタビュー分析結果が共有され、各ツールの「実践における構造的な課題」が明確になりました。
1. ローカルベンチマーク(ロカベン)の限界
ロカベンの活用経験を持つ藤原氏へのインタビュー分析結果からは、「対話促進には有効だが、行動計画策定機能が弱い」という課題が抽出されました。また、上田氏は「事業の可視化には貢献するものの、成果は人間力(ファシリテーション能力)に大きく左右される」と指摘。
ロカベンは「入口の対話ツール」として優れている一方で、対話後に「何をすべきか」という具体的な行動に結びつける仕組みが欠如しているという構造的な問題が浮き彫りになりました。
2. 知的資産経営報告書の「属人化」と「高コスト」
知的資産経営報告書については、西口リーダーが「企業の価値観や理念を言語化し、組織内外のコミュニケーションを円滑にする効果」を確認し、その本質的な価値を評価しました。
しかし、冨松氏の意見によると、その作成には「膨大な時間とコストを要し、支援が専門家のスキルに依存し『属人的』になりがち」であるという、導入障壁の高さが課題として挙げられました。
3. 技術評価の難しさ — 本質議論への壁
上田氏からは、技術評価のインタビュー調査が進まない背景として、多くの診断士が「ツールそのものの本質的な評価」ではなく、「県の制度運用への不満」を語る傾向が強く、本質的な評価に関する意見収集に難航しているという、率直な現状が報告されました。
第2部:論点整理と活用の未来 — 「最適化モデル」構想への道
これらの課題を踏まえ、会議は「ツールの位置づけと活用モデル」という主要論点に議論を集中させました。いかにして、現場の負担を減らし、かつ質の高い支援を実現するか。その答えとして「役割分担の明確化」が浮上しました。
1. 「入口」と「深掘り」— ツールのトレードオフ議論
上田氏は、ロカベンを擁護しつつも、その限界を認めました。「ツールの『使いやすさ』と『機能の脆弱さ』はトレードオフの関係にある。だからこそロカベンは、金融機関の担当者が使う『入口のツール』として最適である。その限界(弱み)を併記することで、次のステップ(専門家連携)への必要性を示すべきだ」と、ツールの役割を明確に区切ることを提案しました。
これに対し、冨松氏も「ツールの弱みは明確に記述し、『使い分け』を強調することが重要だ。最初から深い分析が必要な企業であれば、ロカベンを省略する選択肢もあってしかるべきだ」と、柔軟な活用を支持しました。
2. ロカベンの真の価値は「対話の促進」にある
原氏は、議論の原点に立ち返る重要な意見を述べました。「各ツールの本来の目的を忘れてはならない。特にロカベンの目的は『対話の促進』であり、これを完璧な分析ツールとして評価するのではなく、その目的に沿って価値を判断することが重要だ」と、金融機関の負担軽減のための「入り口」としての役割を再定義しました。
3. 最適化モデルの骨子決定
最終的に、西本がメンバーの意見を集約しました。「金融機関担当者がロカベン等で担うべき 『1次評価(入口の対話)』と、その結果を受けて専門家が技術評価等で担う『2次評価(深い分析と伴走支援)』という役割分担と連携フロー(事業性評価最適化モデル)を明確にすることが、次回のゴールとなりそうだ」
この構想は、企業の状況に応じて最適な評価ツールと専門家のスキルを迅速に割り当てる、兵庫県独自の支援モデルの中核となります。
政策提言の3本柱と、現場で使える「道具」の構想
会議では、この最適化モデルを実現するための、具体的な政策提言の骨子案が確定されました。
1. 政策提言の3本柱(+1)
兵庫県への政策提言は、以下の3つの施策を中核とし、県側からの要望を受けて「事業承継支援」の視点も統合することになりました。
- ① 技術・経営力評価制度の改革: 技術評価の委員会への保証協会職員の参加など、制度運用の透明化と連携強化を図る提言。
- ② ローカルベンチマーク作成支援制度: 現場の業務負担軽減と質の担保のため、金融機関職員のロカベン作成を支援する制度。
- ③ 事業評価ノウハウ研修制度: 現場の「スキル不足」という最大の課題を解決するため、金融機関職員の事業性評価能力を高めるための研修制度の創設。
2. 現場で実践的に使える「道具」の構想
提言の実行性を高めるため、会議では、現場で実際に活用できる**「ツールとマニュアル類」**の骨子案作成も決定しました。
- 企業向けには、自社の価値を再発見するための「価値創造シート」。
- 金融機関職員向けには、対話の質を高める 「対話促進ガイド」や、ツールの勘所をまとめた「ポケットマニュアル」 といった、実践的な道具を報告書の中で具体的に提案します。
さらに、金融機関と専門家をシームレスに繋ぐ「ひょうご事業価値デザイン・成長実現プログラム(仮称)」の概念と機能を具体化し、これを連携の核として提言に盛り込むことが決定しました。
まとめ:次回リアル討論会で「未来図」を完成させる
データとインタビュー分析を終え、私たちの研究は、最終報告書に盛り込むべき「結論」と「行動計画」の骨子を明確にしました。
次回の9月27日(土)には、神戸駅前の会議室で4時間のリアル討論会が開催されます。この場ですべての意見を集約し、「事業性評価最適化モデル」と兵庫版政策提言の具体的な内容を最終決定します。
この討論会が、調査研究プロジェクトのクライマックスです。どうぞ、最終章となる次回の進捗報告にもご期待ください!

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