中小企業技術・経営力評価制度の点数

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各項目に対して点数付けを行う事業性評価ツール

ひょうご中小企業技術・経営力評価制度やそこから派生したツールには、各項目を5段階評価し、コメントが示されます。この各項目を点数で可視化するという点が中小企業技術・経営力評価制度の特徴の一つです。

※画像は公益財団法人ひょうご産業活性化センターが公開しているサンプルを抜粋

本マガジンで取り上げる評価ツールでは

 知的資産経営報告書:いわゆるSWOT分析として定性的に評価する

 ローカルベンチマーク:財務面についてのみ定量的(点数で)な評価を行う

 経営デザインシート:知的資産経営報告書と同様に定性的に評価する

となります。

一方、中小企業技術・経営力評価制度は製品・サービスに始まり、外部環境、マーケティング体制、生産・サービスの提供体制、財務面、経営陣、組織・従業員のそれぞれに対して、5段階ではっきりと評点を付けます

評価書の終盤にはレーダーチャートが示され、会社の状態が把握しやすい資料だと個人的に思います。

上図は例として架空の2社のレーダーチャートを作ってみました。こうして見ると、左の会社は生産やサービスを提供する体制には優れている反面、販売面が弱いことがわかります。逆に右の会社は販売には長けているようですが、生産やサービスを提供する体制に課題を抱えていそうです。

5段階評価の内容

5段階評価の基準について、評価書の中に規定されています。

 5=総合的に優れているレベル。個別評価にも優れた要素・事項が極めて多い。

 4=総合的に良いと評価できるレベル。個別評価にも優れた要素・事項がある。

 3=総合的に一応良いと評価できるレベル。

  しかし、個別評価では努力すべきもの、見直すべきものまたは留意すべき要素・事項がいくつかある。

 2=努力すべきもの、見直すべきものまたは留意すべき要素事項が多く、総合的に良いとはいい難いレベル。

 1=極めて高いリスクまたは重大な問題がある。

評点について、ひょうご産業活性化センターのマネージャーとして3年間、中小企業技術・経営力評価制度の委員会に関わった経験と自らも多数の評価書を作成した個人的な経験から、各点数への見解をお伝えします

まず最高点の5と最低点の1はほとんど使われません。

いずれも100社に1社出るか出ないかというようなレベルです。

5については、その前段階の4の基準がなかなかに高いからです。技術評価制度に慣れた者から見ると、4とついた項目は中小零細企業の中でもかなり優秀なレベルと判断できます。

「○○は強みです」というと「ちょっといいんじゃない?」程度も包括されますが、技術評価制度の4は同規模同業種の中で見本となるレベルです。それも、その項目が当社の業績をけん引するレベルでなければいけません。

なお、ひょうご中小企業技術・経営力評価制度では評価点が一定以上の企業を、「優良企業」として表彰しています。写真は私のお客様が頂いた記念品です。

表彰される評価点の目安ですが、10項目中8項目が真ん中の3、2項目が4で達成できます。もちろん2の項目があればそれだけ4の数が必要ですが、平均すると3.33点なら優良企業と呼ばれるわけです。

この表彰を受ける企業の数はそう多くなく、それだけ4と評価されることが難しいのです。

そして5となると、これは県内の同業者の中でもトップ、全国の中小企業で見ても群を抜いた地方の雄と言えるクラスだと思います。

順番が前後しましたが、続いて3です。

3というと通常は普通の印象ですが、ちょっと強い~ちょっと弱いくらいまでを内包しています。個人的には4にするような業績をけん引する強みもないし、2にするほど業績の足を引っ張るような大きな弱みもないという感覚です。

この普通という基準は、評価対象企業の規模にも左右されます。夫婦二人で切り盛りしているうどん屋さんに就業規則等の規定が整備されていないというのは、そのくらいの規模ならある方が珍しいでしょう。ただ、従業員が100名の会社で規定なんてものはない、最後に更新したのは10年以上前だとなりますと、それは普通とは言えません。

2は明確に弱み、あるいは将来のリスクとなり得る項目です。

一般的に「弱み」と言われるものの中でも、業績改善や短中期的な会社の存続のためには解消が必須と言えるものです。また単に弱みと言っても、現在対策を打っているのか放置されているのか、対応できる残りの時間はどうかという点も総合的に加味します。

例えば、「ある主力製品は社長しか製造できない」という事実があるとして、社長が50歳なら課題ですが中長期的に対応できる時間があります。しかし社長が75歳なら短期的に対応しなければ事業の存続に関わる可能性があります。

最初にお伝えしましたが1も5と同じくほとんど見かけることはありません。

個人的には1が付くような会社は評価をする以前に破綻していると思います。

1は弱みの中でも致命的なものです。

重大な事故が発生した、発生するようなリスクがある。重大な法令違反があり許認可が取り消される可能性があるようなレベルです。

各項目から総合評価が決まる

各項目の評価点が決まると、総合評価が決まります。

技術評価

新規性・独創性、優位性とその維持継続、市場規模・成長性、競合関係、販売方法・販売価格、生産・サービス体制の平均点

全体評価

売上高・利益計画、資金計画・資金調達力、事業遂行能力、人材・組織体制も含めた平均点

平均点に応じて、以下の評価がなされます。

技術評価総合評価
 2(2フラット)平均2未満平均2.1未満
 2+(2プラス)~2.4未満~2.4未満
 3-(3マイナス)~2.7未満~2.8未満
 3(3フラット)~3以下~3.1以下
 3+(3プラス)~3.4未満~3.4未満
 4-(4マイナス)~3.7未満~3.8未満
 4(4フラット)~4以下~4以下

最後に、よくある評点の組み合わせと個人的な企業イメージをお伝えします。

技術評価3+ 全体評価3+

 「優良企業」として記念品が会社に贈られます。

 業績が安定して高水準で、かつ同規模同業種のお手本事例として紹介できるレベル。

技術評価3+ 全体評価3

 業績は好調ですが、同規模同業種のお手本事例とまでは言えないレベル。

 もしくは、何らか懸念がある会社。

技術評価3 全体評価3

 業績は黒字からちょい赤字までの会社。

 全体として、格別良いとも悪いとも言えない普通の中小企業です。

いずれかが3-

 業績は赤字続きで再生局面にある会社が多い。

 また、どこかの項目が明らかに弱点と言える会社。

このように評点が定められていることから、事業性評価ツールの中でも「どのような企業なのか」という点を把握しやすいツールになっています。

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この記事を書いた人

中小企業診断士として独立後12年にわたり主として事業再生の現場支援に従事してきました。支援現場では事業性評価ツールが有効に働く一方、形式的な運用で本質を見落とす場面も数多く見てきました。そうした課題を乗り越えるため、現場視点の情報共有を目的に本プロジェクトへの参加を決めました。

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