皆様、はじめまして。中小企業診断士の森下です。長年にわたり、私は全国の中小企業の「見えない資産」を可視化し、経営の力に変える「知的資産経営」の普及に努めてまいりました。その長い道のりの中で、常に私の胸にあったのは、「どうすれば企業の持つ本当の価値を、経営者自身が、そして金融機関や社会が正しく理解し、未来の成長へと繋げられるのか」という問いでした。
この度、兵庫県中小企業診断士協会の有志たちが、まさにその問いのど真ん中に切り込む、意欲的な研究を立ち上げたと聞き、私は二つ返事で監修をお引き受けしました。彼らが掲げる問題意識、それは私が全国の現場で幾度となく目の当たりにしてきた「宝の持ち腐れ」の現状そのものだったからです。
「ツールはあるが、活かせない」―我が意を得たり、という共感
彼らのレポートにある通り、「ローカルベンチマーク」や「経営デザインシート」、そして私が普及に努めてきた「知的資産経営」「技術・経営力評価制度」など、事業性評価のためのツールは数多く存在します。しかし、立派な資料が作られても、それが社長の机の引き出しに眠り、社員の血肉とならず、金融機関との対話のきっかけにもなっていない。そんな光景を、私も嫌というほど見てきました。
資料を「作成すること」が目的となり、本来の力を発揮できていない。この本質的な課題に対し、彼らは「企業の成長段階に応じて、どのツールを、どのように組み合わせ、何を目的として活用すべきかという実践的な指針が不足している」と喝破しました。まさに、我が意を得たり、です。この的確な現状分析こそが、本研究の価値を何よりも雄弁に物語っています。
単なる評価から「価値創造」へ。彼らが描く壮大な未来図への期待
この研究チームが素晴らしいのは、現状分析に留まらず、その先にある壮大な未来を描いている点です。彼らが掲げる3つのゴール、すなわち「【ゴール1】実態の解明と効果の検証」「【ゴール2】実践的ノウハウの体系化」「【ゴール3】金融機関との新たな連携モデルの提案」は、極めて論理的かつ実践的です。
特に私が注目しているのは、【ゴール2】実践的ノウハウの体系化で述べられている、ベテラン診断士が持つ「暗黙知」や「実践知」を掘り起こし、体系化しようという試みです。マニュアルに書かれた知識だけでは、生きた経営支援はできません。現場での試行錯誤から生まれた知恵こそが、真に企業の変革を促す力となります。この「現場起点のモデル」を構築しようという彼らの志は、私が自身のコンサルティング手法を「BEN’sメソッド®」として体系化してきた想いと軌を一にするものであり、心からのエールを送りたいと思います。

「現場主義」を貫く、信頼できるチーム
何より心を打たれたのは、このプロジェクトを推進する7名のメンバーたちの「覚悟」です。会員の皆様からお預かりした貴重な会費で活動することの責任を胸に刻み、すでに県内各地の金融機関へ足を運び、現場の生の声に耳を傾けている。その「現場主義」の姿勢こそ、信頼に値する専門家集団の証です。
彼らは今、それぞれの専門分野を深掘りしながら、チーム一丸となってこの難題に挑んでいます。2026年からの運用を目指す「事業性融資推進法」の動きも踏まえ、彼らの研究はまさに時宜を得たものであり、兵庫県の一地域に留まらない、全国のモデルケースとなり得る可能性を秘めています。
11月14日、挑戦の集大成を見届けてほしい
この半年間にわたる彼らの情熱と探求の集大成が、11月14日の成果報告会で披露されます。これは単なる研究発表会ではありません。中小企業の経営者の皆様、企業の未来を共に創る金融機関の皆様、そして志を同じくする支援者の皆様にとって、明日からの行動を変える大きな「気づき」と「発見」に満ちた場となるはずです。
監修者として、私は彼らの研究成果に太鼓判を押します。兵庫という地から生まれる、事業性評価の新たな夜明けを、どうか皆様ご自身の目で見届け、そして体感してください。私も会場で、この志高き挑戦者たちの勇姿と、皆様と共に未来を語り合えることを、心より楽しみにしております。
森下 勉
【令和7年度 調査・研究事業 成果報告会】
- 日時: 2025年11月14日(金) 14:00~16:00
- 開催会場: 神戸市産業振興センター 会議室802+803
- 参加費: 無料
- 参加方法:
- 会場でのリアル参加
- Zoomでのオンライン参加+後日での動画視聴参加
[▼成果報告会へのお申し込みはこちら]
皆様と会場で、そして画面越しにお会いできることを、チーム一同、心より楽しみにしております。